ご乗車いただき、誠にありがとうございます。
不定期連載「熊本市電 電停ぶらり旅」。
どこから乗っても、どこで降りても、1回の乗車で180円。線路でつながってさえいれば、180円(小学生は90円)でどこへでも行ける便利な乗り物。それが熊本市民から愛されている、熊本市電です。※2023年6月に大人運賃が180円に改定されました
今回降り立った電停はA系統[2]の「二本木口」。
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余談ですが「二本木口」という名前のこの電停がある場所は「熊本市西区春日」です。「二本木」という地名はこの電停がある通りに面している坪井川を渡った先から白川までの辺りを指します。なのでここは、二本木の入口辺り、というわけですね。
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停留所の建物は、A系統の始発終点である「田崎橋」電停と同じような形をしています。ちなみに今回は新緑の季節に撮影を行いました。
※A系統、前回の「田崎橋」電停はこちら。
電停の案内板に「(合同庁舎前)」とあるように、この二本木口電停を降りるとすぐのところに「熊本地方合同庁舎」が建っています。
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熊本地方合同庁舎は以前、熊本市中央区二の丸にありましたが、2011年から現在の春日へ順次移転されました。
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様々な行政機関などの業務組織が同居している合同庁舎。その中には熊本地方気象台もあります。そのため合同庁舎の敷地内には色々な標本木が並んでいます。
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桜の開花宣言などはこの標本木を観測して発表されるそう。季節ごとに覗いてみるのも楽しそうです。
さて、ぶらり旅ですのでちょっと周辺を歩いてみましょう。
電停の場所に戻って、まずは横断歩道を渡り、道の向かい側へ。
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渡ったら右折し、坪井川沿いの道を真っ直ぐ進みます。途中、坪井川の看板を発見。
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交差点に差し掛かったら左折し、本山通りに入ります。
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少し直進し、陸橋の手前の交差点を右折、道の向こう側へ。
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渡ったら、そのまま道なりに進みます。歩道が狭いので気を付けてください。
しばらく進むと、小さな公園があります。
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この「古町公園」には遊具があるほか、可愛らしい花も咲いています。近所の方が管理されているのか、元気に育っている植物を見ながらほっと一息つける場所です。
ところで、熊本県はかつて「白川県」と呼ばれていたって知っていますか?
この古町公園辺りは、白川県の県庁があった場所なんだそうです。
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白川県庁には明治天皇も立ち寄られ、この場所にはそれを記念した石碑が残っています。
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看板によると、廃藩置県により熊本県が置かれ、旧花畑邸(現在の花畑公園)に県庁が置かれました。その後、一旦、熊本城二の丸に移ったあと、この二本木に移転され、県名が熊本県から白川県に改められたそうです。
そして、八代県が白川県に統合されたことにより、県庁は古城に移り、県名も再び熊本県に改称されたようです。明治4年〜9年頃の間にこれらの出来事は起こったようなので、白川県が存在したのは非常に短い間だったみたいですね。
現在、この白川県庁跡地の周りは住宅街で、近くに幼稚園や小学校、県営団地があり、その先には白川が流れています。今では、市民が生活する場としての側面が強い場所ですが、かつてこの二本木は行政の中心地だったんですね。
激動の明治の中で忙しく働く白川県庁の人々へ思いを馳せながら、もう少しだけ歩きましょう。
先程渡らなかった本山通りの陸橋を渡ります。
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この陸橋(新世安橋)は白川にかかっています。歩いていると、白川の雄大さを感じられます。
陸橋の途中に階段がありますので、ここで降ります。
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降りたらすぐのところに、陸橋の下を通るトンネルが。
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トンネルを抜けたら突き当りの世安神社を左折し、そのまま道なりに。
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少し歩くと…
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到着しました。
かつて、この付近一帯の白川の浅瀬は「旦過の瀬(たんがのせ)」と呼ばれていたそうです。世安(今いる場所の辺り)と二本木(先ほどいた川の向こう側)を結ぶ渡し場であったといわれています。ちなみに現在、旦過の瀬は熊本水遺産のひとつでもあります。
熊本水遺産ウェブページ
1580年(天正8年)、この旦過の瀬を舞台に、阿蘇家の甲斐宗運と島津方連合軍との間で一大合戦が行われました。本能寺の変が1582年(天正10年)ですのでそのくらいの時代です。旦過の瀬は熊本城下唯一の古戦場とされ、この合戦を「旦過の瀬合戦」と呼ぶのだそう。
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立て看板の脇の階段をのぼると、今では開発も進み発展を遂げている熊本駅周辺を見渡すことができます。
あまりののどかな風景に、この場所でかつて合戦が行われていたなんて、なんだか信じられません。
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現在は橋があるため、あっという間に向こう岸に行けますが、昔は、白川を渡るというのは容易なことではなかったはず。加藤清正公も整備に力を入れた、この大きな川を舞台にした物語は、旦過の瀬合戦だけでなく、他にもたくさんあるのでしょう。
さまざまな側面を知って散策すると、初めて行く場所や、何度か見かけた景色、いつも通る道が、もっと鮮やかに見える気がします。
電車と徒歩で進む、電停ぶらり旅。ぜひ、時速20kmと時速3kmの熊本の風景を、あなたなりに楽しんでみて下さい。
それでは、また次回お会いしましょう。
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