熊本市民に親しまれている金峰山(きんぼうざん)。熊本市西区にあることから、西の「金峰山」、東の「阿蘇」と称されることも多く、小中学校の校歌に登場するところも多いのではないでしょうか。
思い返すと、子どものころに体験学習の一環で登った「さるすべりコース」。“猿も滑る”ことからこの名が付いたそうですが、急な斜面をはいつくばって登り切り、頂上で食べたおにぎりが最高のごちそうに感じた記憶が蘇ります。
標高665m。登山ルートが整備されているので、初心者でも比較的チャレンジしやすい山です。熊本市内が一望でき、遠くは長崎雲仙まで見渡せる絶好のビューポイントがたくさんあります。
8月11日は「山の日」。皆さんも身近な山に登って、自然を満喫してみませんか。
標高655m、熊本市民の心のオアシス金峰山とは
古くは「飽田山」と呼ばれていた「金峰山」。一般的に登られている「さるすべりコース」があるのは「一ノ岳」で、「二ノ岳」(685m)、「三ノ岳」(681m)などの外輪山を含む、山の総称なのだそうです。
4合目からスタートする「さるすべりコース」は急こう配のルートですが、距離が短く、駐車場から40分ほどで山頂にたどり着けるコース。体力に自信のある人はぜひ、こちらのコースを試してみてもいいかしれません。
「急こう配のコースはちょっと難しいかな…」という人には、木々に囲まれたなだらかな登山道を迂回して登る「九州自然歩道コース」も整備されており、山歩き初心者でも安心してチャレンジできます。
アウトドア&登山用品専門店「シェルパ」の阿南志武喜さんは、「登りはさるすべりコース、下りは九州自然歩道コースと、ルートを替えてみると両方の楽しさを味わえます」とにっこり。「ただ、さるすべりコースは、滑りやすく、こう配が急なので、下りは足への負担が大きくなります。初めて登る方は、下りは避けた方が良いかもしれません」とアドバイスしてくれました。
標高665mの山頂からは、熊本市内が一望でき、天気の良い日は、長崎雲仙まで見渡せます。季節により山道の木々や草花を楽しんだり、小鳥のさえずりに耳を傾けたりしながら歩くと身も心もリフレッシュできそうです。
金峰山トレッキングに挑戦!(初心者向けの九州自然歩道コース)
金峰山登山にチャレンジしてみましょう!初心者で片道約1時間程度です。
金峰山第1駐車場の隣にある鳥居が入口です。ここから、トレッキングをスタートしてみましょう。
森の中をぐんぐん歩いていくと、「自然歩道コース」と「さるすべりコース」の案内板があります。初心者の方は、左の自然歩道コースへ。
道に沿ってどんどん登っていきます。暑い日も、木陰を歩いていると、時折涼しい風が吹いてきます。
途中、森の中に自生する草花を楽しんだり、熊本市の絶景を見渡せるせるポイントも。
さるすべりコースとの交差地点には看板があるので確認していきましょう。
9合目のこの看板からは、「九州自然歩道コース」と「さるすべりコース」とも、一緒の道を上ります。最後のひと踏ん張り、頑張って!!
頂上には金峰山神社があり、多くの人が参拝しています。
午前8時半ごろにスタートして、撮影をしながらゆっくり登って頂上に着いたのは午前9時半くらい。この日は残念ながらガスで隠れていましたが、天気のいい日は、有明海の先に雲仙の普賢岳がくっきりと見えます。
取材は7月後半の猛暑日でしたが、何とも心地よい風に癒やされる時間でした。
森の精気“フィトンチッド”の癒やし効果
頂上では、「おはようございます」「お久ぶりですね!」と、常連さんが集い、楽しげに話をする姿が見られました。年間300回以上登るという酒井彰一さん(69、北区)は退職後に金峰山登山を始め、「今では日課になっていて、散歩みたいなものですよ」と笑います。
満田隆(中央区)さんは、87歳ながら足取りも軽い様子。「金峰山に上り始めて血糖値が改善した」という山下哲次さん(72、中央区)も、健康増進・維持には、うってつけの山と語ります。
「朝一番に、新鮮な空気を体いっぱいに吸いながら歩くことで、“フィトンチッド”という森の木々から発散される自然のエネルギーを吸収できます。それが健康につながっているのかもしれません」と、皆さん口をそろえていました。
山選びのポイントと心構え
初めてトレッキングにチャレンジする場合、山の選び方や登る際の心構え、事前に準備しておいた方が良い物なども知っておきたいものです。アウトドア&登山用品専門店「シェルパ」の阿南志武喜さんに聞いてきました。
山の選び方
初心者の方は、金峰山や立田山のように、名のある山からチャレンジするように。多くの人が登る山は、必ず他にも登っている人がいるので安心です。人が登らないような山に入ることは避けましょう。
またどんな山も、登る前には必ず情報収集を。山の特徴を知って登ると楽しさも倍増します。お子さんと登る場合は、お子さんから目を離さないように。また、お子さんの体力なども考慮して無理のない山を選ぶようにしましょう。場合によっては、何が何でも頂上を目指すのではなく、途中で下山することも視野に入れておきましょう。
山歩きのコツ
小さい歩幅で、地面を踏みしめながら歩くと、体重移動が少なくなるため消費エネルギーも軽減できます。トレッキングポールがあれば、ぜひ活用を。テコの原理で両手両足にエネルギーを分散しながら歩くことができるため、疲れが軽減します。
トレッキングに必要な準備品
●靴
山歩きにまず必要なのが靴です。スニーカーや中にはサンダル履きで登る人も多いようですが、山はずっと同じ道が続くのではなく、ところどころに不整地の場所などもあります。また、アップダウンがある道を歩くことで、思いの外足への負担も大きくなります。
お勧めは、足首を固定してくれる「ミドルカット」の靴です。初心者でも履きやすく、しかも足首の負担もカバーしてくれます。
厚手の靴下を履き、かかとに指が1本入るくらいのサイズを選びましょう。ジャストサイズや小さいサイズの靴は、血豆など足のトラブルにつながります。靴を購入する際は、必ず足入れして購入することをお勧めします。
●服装
長袖、長ズボンは必須です。山には、木々や草が生える中を歩いていきますので、枝にひっかかりケガをする危険も潜んでします。草負けや虫対策、紫外線対策のためにも、なるべく肌を露出しない服を選びましょう。
素材は、汗が乾きにくいコットン素材は避けて。ポリエステル素材など、汗を素早く蒸発してくれるものを選ぶと良いでしょう。また、収縮性のある素材も服装選びのポイントです。デニムなどでの山歩きはお勧めしません。帽子や手袋なども忘れずに!
●雨具
山の天気は、すぐに変わる可能性があります。「低い山だから大丈夫」と過信していると、登りは晴れでも下りで雨に降られることも少なくありません。また、頂上は風が強く、汗が冷えて寒さを感じることもあります。冷え対策で雨具が活躍することもあるので、必ず持参するようにしましょう。
●飲料
山歩きをする際は、休憩をはさみ水分補給をしましょう。特に夏場は、喉が渇いてからではなく、時間を決めて水分補給をすることをお勧めします。また、どんな山でも過信が命の危険につながることもあります。軽食を持っていると、不測の事態にも対応できます。
●その他の携帯品
写真を撮ったり、連絡をしたりするために、スマートフォンを持って登る人が多いと思いますが、思いの外電気を使ってしまうことも。どの山に登る際も、予備のバッテリーを持っていると安心です。
身近に登れる里山には、虫が蛇、蜂などがいる可能性も。毒吸引器があると、緊急を要する時に素早く対処できます。
金峰山以外に、初心者におすすめの熊本市近郊の山
立田山憩の森
植物や昆虫、鳥類など、さまざま動植物が生息しています。森全体がミュージアムのようになっており、「ドングリの森とトンボ池コース」「野鳥と古(いにしえ)の森コース」「学習の森コース」「野鳥とシイの森コース」の4つの観察コースなどがあります。親子での散策におすすめです。
問い合わせ先:096-346-5090(立田山憩の森管理センター)
所在地:熊本市北区龍田陳内2-43-23
雁回山登山道
森の中に整備された登山道があり、40分~50分で頂上を目指せる「雁回公園コース」は初心者におすすめです。頂上の展望所からは、熊本市内はもちろん、阿蘇山、八代海まで360度の大パノラマの絶景を楽しめます。
問い合わせ先:096-328-2352(熊本市花とみどり協働課)
所在地:熊本市南区富合町木原
山登りの絶好の季節、近場の山から始めてみて
登山というと、日本名山のような名峰を想像する人も多いと思いますが、熊本市内にも、身近に楽しめる初心者におすすめの山がたくさんあります。
これから秋に向けては、山歩きに絶好の季節です。熊本市内中心部から車で約30分。片道1時間ほどで頂上を目指せる金峰山で、“フィトンチッド”を全身から浴びに出かけてみませんか。
※自生する木々や草花の保護はもちろん、登山者同士が気持ちよく登るためのマナーを守ることを忘れずに!
■アウトドア&登山用品専門店「シェルパ」
電話:096-362-9585
住所:熊本市中央区新屋敷1-14-30
https://renzan.net/shop/kumamoto
(構成・取材・文・撮影/大平誉子)
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