2022(令和4)年に入り水前寺成趣園の参道に続々と新たな店がオープンするなど、これまでとは違った息吹が感じられるまちに変わりつつある水前寺。水前寺成就園の歴史や見どころのほか、魅力あるまちづくりに力を注ぐ人々など、いろいろな角度からその魅力をご紹介してきました。シリーズ最後は、水前寺参道に彩りを添える新旧の店舗にお邪魔してきました。
お土産店、着物貸衣装店など、さまざまな店舗が並び、笑い声が絶えない参道には、きっとあなたも足を運んでみたくなる、そんな店がいっぱいです。
新旧の店舗でつくる新たな参道の魅力
水前寺参道の新たな魅力発信拠点になっているのが2022(令和4)年3月にオープンした「水前寺ギャラリー茶寮松柏(しょうはく)」です。代表の市丸耕太郎さんは、大学進学をきっかけに熊本へ。「最初に住んだのが実は水前寺。アルバイトをしていたのもこの店の母体である水前寺の老舗旅館松屋本館。卒業後は松屋本館に就職しました」と語ります。
宿泊・観光を商いとする中で水前寺成趣園への観光客の減少と空き店舗が続く現状に危機感を抱いていた市丸さん。その折りにエントリーした県の地域課題解決型支援補助金のプレゼンが採択され、2021(令和3)年に株式会社b.m.cを設立。現在、代表取締役として「茶寮松柏」を立ち上げ、水前寺の魅力発信に力を注いでいます。
ギャラリー内には、小代焼など熊本県の伝統工芸品のほか、骨董品などを展示、販売。カフェスペースでは、水前寺にちなんだ水前寺菜を使った「水前寺菜のシフォンケーキ」や三角産のレモンに水前寺菜のシロップを入れていただく「レモネード」など、熊本県の特産品を堪能できるメニューが揃っています。
人気の「水前寺菜の湯豆腐と松柏いなり」は、水前寺菜を使った豆腐を特性だしで仕上げた湯豆腐と玉名の南関あげのおいなりさんが楽しめる逸品。その他にも、城南町の竹田製茶さんの茶葉を使った和紅茶や植木町のハナウタカジツさんの果物を使ったクラフトコーラなど、熊本県内の味の旅も楽しめそうです。
「熊本を知ってもらえる場所」をコンセプトに「水前寺ギャラリー茶寮松柏」を運営する市丸さん。「水前寺菜をはじめ、熊本が和紅茶発祥の地であることを知らない県民も多いのではないかと思います。地元熊本の皆さんにも、ここに来れば“熊本をもっと知れる、何かおもしろいものがある”と思ってもらえる場所にしていきたい」と語ります。「ただ、自分たちだけの力では何もできません。商店会や地域の皆さんと知恵を出し合い、水前寺成趣園参道の活性化につながる一助になりたいです」
■「水前寺ギャラリー茶寮松柏」
住所:熊本市中央区水前寺公園7-2
問い合わせ先:096-282-8421
営業:10時~17時
休:月曜(祝日の場合は営業)
instagram:@saryoshohaku
県産野菜をふんだんに使った水前寺参道のNEWランチスポット
水前寺成趣園参道に2022(令和4)年4月にオープンした「gingila(ギンギラ)」は、若者から地域の高齢者、飲食店のオーナーなど、あちこちから“人を呼ぶ”人気のランチスポットです。
水俣出身の同店オーナー・落合さんは、地元で開かれていたオーガニックマーケットの野菜にほれ込み、そこで仕入れた野菜を中心にメニューを提供していましたが、今では生産者とのつながりもでき、直接収穫や買い付けに行くネットワークもできたそうです。
「作っている人の顔の見える野菜にこだわっているのは、実は私が大病を患ったことがきっかけでした。食事改善が必要な状況で、食べてはいけないもの、調味料からすべて見直し毎日献立を立てる…。そんな生活に疲れ果ててしまい、一度すべての制限を止めてみました。食べていいものは、自分の体が喜ぶもの―。そう思うようにしたのです」と落合さん。
食事制限のストレスがなくなったこともあってか体調は徐々に改善。自分の体が喜ぶ料理は、顔の見える安心・安全な野菜を使った、お母さんの作る料理だったそうです。
「何でもない家庭料理なんですよ。でもちょっとだけ、盛り付けにもこだわったりしながら、“楽しく&おいしく”食べてもらえるよう工夫しています」
落合さんの作るごはんは、味はもちろん、色鮮やかで目でも楽しめるものばかり。そこに、このはじける笑顔のスパイスが加われば、皆の「また行きたい」店になるのでしょうね。
■「gingila」
住所:熊本市中央区水前寺公園5-19シティハウス23-1F
問い合わせ先:080-4288-5082
営業:ランチ11時~15時(OS14時)、カフェ14時~18時(OS17時)
※金・土曜のみ 18時~21時(S20時)も営業
休:月曜(不定休もあり)
instagram:@gingila_kmj
焼きたて、アツアツをどうぞ! 老舗菓舗店の「水前寺もち」
新しい店舗と並び、参道で名物「水前寺もち」を焼き続ける「お菓子のおくやま」の奥山勝英さんと千恵子さん。香ばしい焼きもちの香りが通りに漂います。
「手作り、焼きたてですよ!」。千恵子さんの呼びかけにお客さんも足を止め、鉄板をのぞき込みます。北海道十勝産のあずきをあんにするのは勝英さん。県産のもち米で作ったお餅にあんを入れ手早く丸めて焼くのが千恵子さんの担当。夫婦二人三脚で、店の味を守り続けています。
■お菓子の「おくやま」
住所:熊本市中央区水前寺公園5-25
問い合わせ先:096-383-0669
営業: 8時~17時
休:なし
「水前寺かいわい」の魅力をシリーズでご紹介した今回の企画。これから初めて熊本を訪れる方はもちろん、何度か訪れたことのある方や、熊本に長年住んでいる方も、新しいまちの魅力が見つかったのではないでしょうか?歴史、文化、人が織りなす水前寺の魅力を探しに、ぜひ皆さんも出かけてみてくださいね。
(構成・取材・文・撮影/大平誉子) ※写真の一部は借用しています
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