国土交通省の2022(令和4)年度「都市景観大賞」において、景観まちづくり活動・教育部門の大賞に「白川「緑の区間」における水辺の賑わいを創出するための地域活動」が選ばれました。
この受賞の大きな要因となったのが、2018(平成30)年から開催され毎回賑わいをみせている「白川夜市」です。
「緑の区間」は、熊本市中心部を流れる白川の大甲橋~明午橋間の河川敷のことで、大きな楠が何本も立ち並び、緑あふれる癒しの空間が広がっています。 そこで月に一度のペースで開かれているのが「白川夜市」。夜市と言えば、昭和の時代には各地区・各町単位で行われ、金魚すくいやヨーヨー釣り、お面やたこ焼き・いか焼きなどの屋台が並び、子ども心をくすぐる夏の風物詩として賑わいを見せていました。
その懐かしの夜市の復活のきっかけとなったのが、水辺の空間を利用して豊かな社会づくり、新しい可能性を創造していく国土交通省のプロジェクト「ミズベリング」です。活動の一環として緑の区間で行われたマルシェに参加した『Shirakawa Banks』の代表・ジェイソン・モーガンさんは、白川沿いで店舗を運営しており、街の中心地にこんな素敵な川があるのに、誰も見ていない、使っていないのはもったいないと常々考えていたそう。
「マルシェに参加し可能性を感じていた時に、地域のディスカッションで聞いたのが、昔は夜市や屋台があったりして良い雰囲気だったという意見でした」。アメリカのニュージャージー州出身のジェイソンさんにとって、もちろん“夜市”という存在は初めて聞く言葉。地域に当たり前のように存在し、子どもの頃の楽しみだったというお祭りがこの場所で出来ればという思いで「白川夜市」を立ち上げました。
「運営を行う『Shirakawa Banks』のメンバーは、共にこの地域で生まれ育った人や、私のように近隣で商売をしている人たちで構成される団体で、ミズベリング事業の一環として国土交通省や地域のみなさん、行政の皆さんにも協力していただいています。2018(昭和30)年6月から始まり、同年に2回、2019(平成31、令和元)年には10回開催し、多い時は2000人程の来場者数を記録しました。
しかし、2020(令和2)年に入ると新型コロナウイルス感染症が蔓延し始め中止せざるを得なくなりました。ただこのお祭りはどうしても続けたいという思いがあり、感染対策を取り開催にこぎつけました」とジェイソンさん。受付を2カ所つくり、検温や接触確認アプリの確認、敷地内を販売スペースとイートインスペースに区分し、会場の面積を倍にし、出店間のスペースを空けることで三密を回避。コロナ禍で中止されていたイベントが多かった中、熊本市内でいち早くイベントを復活させました。
「毎月行うイベントでしたのでフットワークは軽く、感染者次第で開催の是非を決め、できるだけ実施してきました。今では皆さんの間でウィズコロナの意識が定着し、感染対策もしっかりできていると思います。まだまだ意識はコロナと共にあり手一杯ではありますが、今後はお店を増やしたり、音楽やライブなどのコンテンツを増やしたりしていけたらいいなと考えています」と続けます。
「いらっしゃいませー!」の元気な声が響く 笑顔あふれる子どもたちの楽園空間
飲食はもちろん物販など毎回30店舗以上並ぶ夜市にかかせないのが、金魚すくいや射的などが楽しめる遊戯系の屋台。白川夜市でも毎回子ども達が群がるテントがありますが、なんと店に立って接客しているのは子ども達です。
『一般社団法人くまもとターボ』の活動の一つで、地元白川校区の子ども達が企画から実践まで行っているそう。もちろんできない部分は親がフォローすることになりますが、実際に売上も十分でビジネスとしてちゃんと成り立っているとのこと。射的や自家製のドクダミ茶を作ったり、子ども達の自主性にまかせた運営を行っているそうです。21時までの時間制限はありますが、毎回行列ができる人気店になっています。
屋台ならではのやり取りが楽しくなる 絶品揚げたて蒲鉾
「揚げ立てだけん、たいぎゃ熱かばい! トロトロでございますよ~。フーフーして食べなっせね~」とお客とフレンドリーなやり取りに思わず笑顔になってしまう『糸石家』。
京町に店を置き、蒲鉾の専門店として1947(昭和22)年に開業した老舗店で、白川夜市には初期の頃から参加しています。あくまで手造りにこだわり、素材にはすり身と相性の良い食材を全国からセレクト。夜市ではその場で揚げる“チーズ揚げ”や“なんこつごりごり”などアツアツの練り物が食べられます。
店主の糸石さんは「なにより出ていてこちらも楽しい夜市ですね。うちでは実演ではなくライブと言っています。お客の目の前で揚げて、会話も楽しみながら販売する。そぎゃん売れんでも楽しかったらよかたい!てなりますね」と笑います。揚げ立ての商品のほか、人気の詰め合わせも販売しています。
■手造りかまぼこの店 糸石家
問合せ先:フリーダイヤル:0120-527-557
(上記でつながらない場合:096-352-7557)
所在地:熊本市中央区京町2-8-24
営業時間:10:30~18:00(土曜日のみ10:30~15:00)
休み:水曜・日曜・祝日(その他不定休あり)
炭火焼きの香ばしさがたまらない、テイクアウトグルメ
強制的に食欲を呼び起こす「炭火の香り」。思わず並んででも食べたくなる香ばしく焼き上げた串焼きが評判の『雷ホルモン』。
月出にある店舗では、焼肉でホルモンや地鶏を焼いて食べるのがメイン。鹿児島直送で新鮮な肉を楽しむことができ、焼きそばやカレー、ちゃんぽんなどの裏メニューも人気です。夜市では、牛カルビやタン、豚バラ、フランクフルト、肉巻きおにぎりなどが評判で、炭火で焼くことで屋台とは思えない本格的な味わいが楽しめます。
店主の富山さんは「小さい頃に蓮台寺に住んでいて白川には思いがあります。おかげで楽しみながら出店していますし、団体が行っている草刈りにも毎回参加しています。自分がきれいにした所で店を出すのは気持ちいいですね。あと、いらっしゃるお客さまがおしゃれで若い人も多いですね」と話します。
■雷ホルモン 月出道場
問合せ先:096-387-4857
所在地:熊本市東区月出2-4-57
営業時間:18:00~22:00
休み:不定
ゆらゆらと輝く川面を見ながらのビールは非日常の極上の味
屋外のお祭りといえば、ビールが欠かせません! 白川の緑の空間で川面や街の灯りを見ながらのビールはさらに格別なはず。毎回異なる地域限定のビールが楽しめるのはクラフトビール&ブックバーの『voyager(ボイジャー)』。
夜市立ち上げ人のジェイソン・モーガンさんの会社が運営を行うお店で、夜市が行われている場所から大甲橋をはさんで向かい側の白川沿いに店舗を構えます。世界のクラフトビールを扱っており、アメリカや日本のビールのほか、カナダやオーストラリアなどのビールも取り扱っています。
量り売りも行っており、容器を持っていけば新鮮な味わいが楽しめるのも特徴です。アメリカ仕込みのボリューム満点ハンバーガー“九品寺バーガー”も人気。夜市ではクラフトビールを提供し、熊本だけでなく他県や海外のビールも好評です。
■クラフトビール&ブックバー voyager(ボイジャー)
問合せ先:096-200-7796
所在地:熊本市中央区九品寺1丁目1-26 River Port 9 1B
営業時間:11:30~14:30(金曜・テイクアウト&デリバリーのみ)、18:00~24:00(日曜は~22:00)
休み:木曜
ようやくイベントなども行われるようになり人手も元に戻りつつあるなか、コロナ禍からしっかりとした対策を取り開催されてきたこのイベント。「最近では付近の住民の皆さんや学校の子ども達が楽しみにしていると聞きます。子ども達の間で話題になっているのはうれしいですね。私達が勝手にやっているのではなく、みんなで、地域行事として続けていければというのは最初から目指していることです」とジェイソンさんは話します。
回を追うごとに賑わいを増す「白川夜市」。地域の当たり前の行事として定着しながら、これからどんな進化を見せるのか楽しみです。
■白川夜市
会場:白川「緑の区間」(白川大甲橋付近)
日時:毎月第4土曜日16:00〜22:00(冬期12月〜2月頃は休み)
(開催状況はShirakawa Banks公式サイトよりご確認ください)
URL:https://shirakawabanks.site/
(取材・文・撮影/内田保知)
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