過去から受け継がれた貴重な宝ものたち。

熊本には、世界的に認められた魅力のある歴史的資産がたくさんあります。


ここ熊本市にも、「世界かんがい施設遺産」に登録された歴史的価値のあるかんがい施設があることを知っていますか。

今回は熊本市でみられる「かんがい施設」を紹介します。

「かんがい」というのは、農作物の生育に必要な水を、水路を引くなどして供給し、耕作地を潤すことです。漢字だと「灌漑」と書きます。例えば、山都町の日本最大の石造級アーチ水路橋「通潤橋」もかんがい施設で、2014(平成26)年に県内で初めて世界かんがい施設遺産に登録されています。


農作物を育てるためには当然水が必要ですが、雨の少ない季節などは水が足りなくなり、農地が川などから離れていると、水の確保が難しくなります。そこでかんがい施設を設けて、水を遠くの農地まで人工的に供給するというわけです。しかし、闇雲に川などから水を引けばいいというわけではありません。水をコントロールして利用する、いわゆる「治水」「利水」を行う必要があります。


江戸初期、熊本では加藤清正公がこの治水・利水事業に着手します。熊本市を流れる白川は、流量の変化が大きく、土壌が火山灰土から成るため、特に中流域では水の地下浸透量が大きいという特性があります。そういった特性を理解した上で、清正公は自ら現場に赴き、治水・利水に有利な場所を選定し、井手(用水路)を整備しました。それからおよそ400年後の今も、白川流域の水田に農業用水を供給し続けています。

清正公のかんがい施設を見つけに、熊本市のマチナカ探訪!

治水・利水に類まれな力を発揮し、“土木の神様”とも呼ばれている清正公。

そんな清正公が整備した「かんがい施設」は熊本市中心部にも現存します。

マチナカにあるかんがい施設を見ていきましょう。

まずやってきたのは、熊本市中央区新屋敷にある白川小学校のすぐ側を流れる水路。地図で熊本市を見ると、大きな川の他に、水路が通っているのがわかりますが、そのひとつです。

大通りから少し入った、マンションなどの住宅が並ぶ通りにある水路で、これらの水路は、もともとある自然の川や、船などが通るための川ではなく、治水・利水のための水の通り道。水量が豊富な白川の水を、水路の幅を変えたり、分岐を行ったりして引き入れています。


さらにこの「かんがい」の流れをたどると面白いんです!


地図で見ると道路を挟んで水路は細切れに記されています。途切れているのかと思ってしまいそうですが、実際に白川小学校近くの水路から少し歩いて、路面電車(熊本市電)が通る県道28号線を渡り、道の反対側へ行ってみましょう。水路はどのようになっているのでしょうか。

道を渡り、熊本市中央区九品寺へやってきました。


当然といえば当然なのですが、水路が唐突になくなるわけではありません。水路は道路や建物の下を通りその先へ水を運んでいます。


熊本に住んでいても、普段通っている道の下に水路があるとは知らなかった、という人は多いかもしれません。

ちなみに水路のことを「井手」とも言いますが、この井手の側にある公園の名前は「井手の口公園」。熊本をまわっていると、この「井手」に関連した地名や言葉に出会うことがあると思います。ぜひ色々探してみてください。


市街地を少し歩くだけでも見つけられる「かんがい施設」。熊本がどれだけ水と密接に関わって生活しているのかを改めて実感させてくれます。

水が行き着く先は…?

さて、この水はどこに行っているのでしょうか。


「かんがい施設」なので、最初にお伝えしたとおり「農地を潤す水」ですから、農地へつながっているはず。水の流れる先まで行ってみましょう。


地図上では途切れ途切れになっている水路をたどり、井手の口公園から車でおよそ20分。


熊本市南区にやってきました。

撮影した時期がちょうど稲刈りシーズンでしたので、水路の側には美しい稲穂が広がっていました。


加藤清正公が整備した「かんがい施設」は、今でもこうして水を農地へ運び、現在の我々の生活を支えてくれています。


今回紹介した「かんがい施設」は、水の都・熊本を潤す「白川流域かんがい用水群」のひとつ「渡鹿用水」。


用水群はその他、熊本県北部の大津町・菊陽町にある「上井手用水」、「下井手用水」、菊陽町・熊本市にある「馬場楠井手用水」から成ります。

ぜひ地図を広げて水路をたどり、熊本にある「世界かんがい施設遺産」を散策してみてください。

水の都・熊本で「世界かんがい施設遺産サミット in Kumamoto」開催!

このたび、熊本では、かんがい施設の持続的な保全と活用を進めていくことを目指し、全国で初めて「世界かんがい施設遺産サミット in Kumamoto」が開催されます。

開催日は、今年2022年4月11日(月)〜12日(火)。


会場参加は関係者のみとなりますが、どなたでも熊本市公式YouTubeチャンネル(https://youtube.com/user/citykumamoto)にてLIVE配信を視聴できます。


この機会に、現在に至るまで受け継がれてきた世界的資産であるかんがい施設について考えてみませんか。

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