2020年春から続く新型コロナウイルス感染拡大により、私たちの暮らしや行動は、今でも制限がつづいています。県外への移動を控える方が多いなか、ここ熊本と「県外のお客さんをむすぶサービス」を模索する店が増えているようです。自由な発想で、新しい挑戦を始めたオーナーさんたちに話を聞きました。
これまで店舗で行っていた「香り診断サービス」のデザイン・パッケージを一新し、自宅でできるキット「アロマの宅急便」をはじめた「Ayame Organic」(中央区上林町)。昨年からスタートした、動画で楽しむおうち料理教室「シェフズ・キッチン」が大好評の「カフェ&ビストロ ショコラ」(中央区下通)。
アロマと料理。ジャンルは違えど、どちらも家でのオフタイムを豊かにしてくれるもの。コロナ禍でうまれた、各店オリジナルの宅配サービス。自由な発想で、新しい挑戦を始めたオーナーさんたちに話を聞きました。
自宅で気軽に香り診断。 心と体を、みずから整える。
「皆さんが思っている以上に人間の体は正直で、実は”香り”からたくさんのことがわかるんです。長引くコロナ禍で、ちょっとした体の不調や心のざわつきを抱え、バランスを崩しがちな方も多いと思います。そんな時にはぜひ、アロマの力をたよってほしい。そんな思いでこのサービスをはじめました」。
穏やかに話すのは、嗅覚反応分析士トレーナーの徳永真夕(とくながまゆ)さん。現在、並木坂のビルの2階でオーダーメード・アロマストアを運営する徳永さんは、この場所を拠点に「嗅覚反応分析」の可能性とアロマの魅力を広めています。
嗅覚反応分析とは、その名のとおり「嗅覚」を利用した体質分析法。8種用意されたアロマから好きな香りを順に選び、その分析結果から、いまの心と体の状態をグラフ化するというものです。
これまでは直接店舗に来店していただき、診断を受けてもらったチャートをもとに、お客さんにとっての「より良い選択」を導き出していた徳永さん。心地いい時間が流れる店内で、食事法やリラックス法などが書かれたアドバイスシートをもとに、一人ひとりのお客さんにあったアロマアイテムを提案してこられました。
「長引くパンデミックで、街なかにお客さまの足が遠のいてしまいました。またいつもと違う生活様式になり、ただでさえストレスを感じやすい日常がつづいています。そこに対応するためにも、定期的に”いまの自分の状態を知っておく”ということが大事。そこでスタッフと相談し、店頭に足を運ばなくても”嗅覚反応分析”のサービスを受けていただけるように、このキットを開発することにしたんです」。
サービスの名前は、ずばり「アロマの宅急便」! 宅急便を思わせるかわいい箱のなかには、専用チェックキットと記入シートが同封されています。お客さんは好きなタイミングで自宅で香り診断を行い、記入シートをLINEで送れば、嗅覚反応分析に基づいたオリジナルアドバイスシートと、店舗でブレンドしたアロマオイル(1本)が郵送で送られてきます。そこに書かれた生活ケアを実践したり、アロマオイルを暮らしにとりいれたりすることで、自分自身で心と体を整えることができるというわけです。
「ご家族やパートナーへの贈りものとして利用される方も多いですね。手にとった方が少しでも気分が明るくなるように、デザインにもこだわりました。いま自分が求めているものは何か、本当に必要なものは何か、気づくきっかけになれば嬉しいです。そして、この”アロマの宅急便”でうちを知っていただいたお客さまと、いつの日かお店で会えるのを楽しみにしています」。
”レストランの味”に挑戦。 あっという間に自宅が料理教室に!
シャワー通りの隠れ家フレンチ「カフェ&ビストロ ショコラ」のオーナーシェフ・宮本智久(みやもとともひさ)さんに送っていただいた、数字4ケタのパスワード。それをインターネットで開いてみると…画面越しに宮本シェフが登場! 料理番組さながらの動画がスタートしました。これが、同店でいま絶大な人気を誇る「シェフズ・キッチン」のワンシーンです。
「おうちで料理教室」の動画はこちら→https://www.instagram.com/p/CQ6F_qRAD2d/?utm_medium=copy_link
「おうちで料理教室」と名付けられたオンライン料理教室は、昨春スタート。その週のレシピを購入した「受講生」たちは、自宅で好きなときに動画を見て、”フレンチレストランの味”を再現することができます。これまでに登場したレシピは70を超え(2021年7月現在)、毎週、全国のファンから70〜80セットもの注文があるというから驚きです。レシピは2人前で2700円。人気の秘密は、サービスの「わかりやすさ」。調理手順のポイントがしっかり整理・編集された料理動画と、分量どおりにきっちり測られた食材と調味料が手に入るとあって、お客さんの満足度が非常に高いサービスとなっています。
「2020年春、街なかから飲食店の灯が消えました。容易に”お店に来てください”と言えない状況。これはかつてないほど苦しく、正直、頭を抱えました。どうにかしてお客さんとつながる方法を模索したあの頃、多くのお店がテイクアウトサービスに舵を切ったように、僕らも”シェフズ・ボックス”と名付けた日替わり弁当サービスを始めたんです。こちらもとても好評だったのですが、刻一刻と状況が変わるなかで、一時的なものではなく、ずっと持続できる料理サービスでお客さまに喜んでもらいたいと、いまの形になりました」。
レシピ決め・動画撮影・編集・食材の振り分け・レシピ郵送…そのすべてを、チーム一丸となって取り組むそうです。毎週のことですから、その大変さは想像がつきます。
また一般的なオンライン料理教室は日時や時間があらかじめ決まっていることが多いですが、「シェフズ・キッチン」は、自分の好きなタイミングで動画を観て、料理を楽しむことができるのが特徴。一度購入すると繰り返し観ることができるので、自宅で何度でもシェフの味を再現できるのです。
お客さんが投稿されたというSNSをのぞいてみると、「ペスカトーレ」「桃とトマトの冷製パスタ」「海老と枝豆のパロティーヌ(包み料理)」…見た目も鮮やかなフランス家庭料理がたくさんアップされていました。「こんな風に、お客さま自身のペースで”料理をする楽しみ”に寄り添えることがうれしいですね。コロナ禍で、生活様式は一変しました。それでもいまのライフスタイルに合ったかたちで、レストランにできることを、無理なく継続させていくお手伝いができればと思っています。この状況が落ち着いたら、ぜひ熊本の恵みを堪能しにお店にいらしてください!」。
(構成・取材・文・撮影/福永あずさ、AyameOrganicの写真は先方提供)
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