毎年恒例の「くまもと春の植木市」が、白川河川敷で今年も開催中です【3月11日(土)まで】。植物だけでなく、木工品や園芸用品などの雑貨のほか、食品や軽食の出展もずらりと並ぶ会場は、連日、多くの入場客でにぎわっています。
この植木市、なんと440年以上も続く、歴史あるイベントだとご存知ですか? その起源は、あの織田信長や豊臣秀吉が天下統一を進めていた時代・安土桃山時代にまでさかのぼります。くまもと植木市振興会の藤田尚子さんに詳しく聞きました。
熊本の歴史とともに変化し続ける植木市
熊本の春の風物詩として根付いている「くまもと春の植木市」。出展者で構成されるくまもと植木市振興会と熊本市が主催しています。
その起源について、同会の藤田さんは「今から440年以上前の天正年間(1573~1592年)に、現在の熊本城の南側に位置していたといわれる隈本城主だった城親賢(ちかまさ、生年不明〜1581年)が始めた市に由来するといわれています。『肥後見聞雑記』には、親賢公が病床にある子息を慰めるため、何か珍しいものを催すように申しつけ、城下の新町1丁目で(子どもの遊ぶ玩具である)木の獅子頭や雉子(きじ)を作り並べた市を開いたことによる、と記されています」と話します。
市で花木の商いが盛んになったのは、熊本城下で園芸が活発に行われるようになった宝暦年間(1751~1764年)以降なのだそう。
6代藩主細川重賢(しげかた、1720〜1785年)は、植物学に造詣が深く、薬草栽培を奨め、一般植物の栽培も藩士に奨励したため、熊本で本格的に園芸が始まりました。また、10代藩主細川斉護(なりもり、1804年〜1860年)も花卉盆栽を好み、園芸を奨励したことから、熊本の園芸は最盛期を迎えました。植木市の発展には、こうした人々の植木愛の高さが背景にあったと考えられています。
昭和の初期頃、植木市は現在のように会場を固定せず、数日間の会期で転々と移動して行われていました。当時は、出展者の種類も少なく、1ヵ所に80人ほどの生産者がリヤカーや大型の荷車で運んでくる程度の規模でしたが、県内各地からの客は多く、露店も立ち並びにぎわっていました。
その後、道路交通量の増加などにより、路上で市を開催することに支障が生じるようになったため、広い会場に場所を移します。1965(昭和40)年〜1975(昭和50)年の11年間は白川公園、1976(昭和51)年〜2006(平成18)年の31年間は白川河川敷、2007(平成19)年〜2016(平成28)年の10年間は戸島いこいの広場など、一定期間で会場を固定して行われるようになりました。
2017(平成29)年は、熊本地震の影響で規模を縮小し、会場も城山公園に移して開催されましたが、2018(平成30)年には会場を再び白川河川敷に戻し、現在に至ります。
「440年を超える歴史の中で、戦時中だけは休園しましたが、終戦の翌年には再開。熊本地震の後もコロナ禍でも、その規模や場所、内容を工夫しながら、自分たちにやれることをやろうと、伝統を絶やさないようにと続けてきました。これは私たちの誇りです」と藤田さん。
また、「時代が変われば、人々のライフスタイルや植物との付き合い方も変わります。植木市でも、以前は庭園の展示が人気でしたが、最近は、室内で手軽に育てられる多肉植物や小さめの鉢植えの需要が高いです。お客さまのニーズに合わせて変化しながら、これからも植木市の歴史をつないでいきたいですね」と、今後の意気込みも語ってくれました。
植木市の成功と発展を祈願。城親賢公の墓前祭
毎年、植木市が始まる前の1月中旬頃に、城親賢公のお墓がある岳林寺(熊本市西区島崎)で、墓前祭が行われています。これは、植木市の起源が、親賢公が命じて始まった市に由来することから、親賢公の遺徳を偲び、植木市の成功と発展を祈願する追悼法要として実施されているものです。
今年も1月13日に、親賢公の子孫やくまもと春の植木市実行委員メンバーなど20〜30人が参列し、墓前祭が催されました。
岳林寺の住職による読経(どきょう)で始まり、くまもと植木市振興会の宮原國臣会長による祭文奉呈(さいぶんほうてい)、住職の読経、参列者全員の焼香と続き、最後に、熊本市農水局の大塚裕一局長と、親賢公の子孫・城政樹さんがあいさつしました。
植物、雑貨、グルメ…、90店がずらり!
植木市が毎年、2月から3月にかけて開催される理由は、この時期が多くの植物の休眠期にあたるためです。休眠期に植物を植えると、春に芽吹くのだそう。
会場には90店が並び、大きな庭木のほか、果樹苗などの苗木、多肉植物、ミニ盆栽、花の寄せ植えなど、多彩な植物を展示販売しています。今年は入場者数の制限がないこともあり、取材した日もたくさんの入場客でにぎわっていて、品定めをしたり、出展者に育て方を聞いたりと、思い思いに植木市を満喫していました。
植物のほかにも、竹細工や木工品、刃物、骨董品、お茶、漬物、観賞魚など、幅広い種類の店がずらりと並びます。
また今年は、3年ぶりに会場内での飲食が可能になり、飲食スペースでは、県産品のおこわなど名産品を堪能する人の姿も見られました。
植木市は、3月11日(土)まで毎日開催されます。色とりどりの花木を眺めたり、グルメを堪能したりと、いろんな楽しみ方ができる植木市。ぜひ足を運んで、春の香りを感じてみてください。
■くまもと春の植木市
日程:開催中〜2023年3月11日(土)
時間:9:30〜17:00
場所:JR熊本駅東側 白川河川敷
URL:https://kuma-uekiichi.com/
※無料の駐車場が、白川橋側と泰平橋側に2箇所あります。来場経路などは、HPの交通アクセスで事前に確認を。
同じテーマの記事
-
熊本市電 電停ぶらり旅 A系統[2]:二本木口編
2022.06.08
-
明智光秀の娘、ガラシャの人生をめぐる旅
2019.07.17
-
味も見た目もインパクト大! 熊本の個性派かき氷
2022.07.20