熊本で育ち、全国・世界で活躍する若者がいます。

熊本で暮らし、日々活動に励む若者がいます。

熊本を愛し、熊本のこれからを真剣に考えている若者がいます。

熊本の未来を担う彼らは、何を思い、どんな日々を送っているのでしょうか。

熊本のホープをご紹介する『熊本の未来を担うクリエイター』。

第1回目は、The Fruit Company 大西裕輔さんです。


規格外フルーツをジュースに

味も品質も問題ないのに、形や大きさが不揃いなために廃棄されてしまう果物たち。

この「規格外フルーツ」をジュースにして販売するプロジェクトが、

2020年春、立ち上がりました。

クラウドファンディングで支援を募り、見事に目標を達成。

12月現在、製品化したジュースを発送し終えたところだといいます。

プロジェクトを行っているのは「The Fruits Company」。

メンバー全員が20代という若きクリエイター集団です。

この発起人である大西裕輔さんは、熊本市出身。

The Fruits Companyの活動やその生き様には、家族や故郷への深い想いがありました。


「自分の感覚だけは信じている」

大西さんは、1997年生まれの23歳。

熊本市で生まれ、熊本学園大学付属高校を卒業後、進学のために上京します。

「学生時代は、大企業のサラリーマンになりたいと思っていました。

小さい頃からサッカー少年でしたが、県内最強のクラブチームや

強豪校のサッカー部に所属していて、ネームバリューがないと不安だったんです」

就職活動を前に、やりたいことが見つからなかった大西さんはアメリカへ留学。

以前から好きだったセレクトショップのオーナーにInstagramでコンタクトを取り、

インターンに行きたいと申し出ます。

「写真も映像も撮れるし、ファッションの知識もあると言ってアピールしました。

独学で勉強もしていましたし、何より自分の“感覚”だけは良いと信じているんです。

それ以外は、本当にダメだなと思うんですが(笑)」

その意欲と実力を買われ、憧れのセレクトショップでスタイリストとして働いた大西さん。

帰国後は、泊まれる本屋「BOOK AND BED」の店舗ディレクター、

映像制作会社のプロデューサーなど、華々しい経歴をたどります。

そして、2020年4月に独立。5月にThe Fruits Companyを立ち上げました。

大企業に勤めたかったはずの青年は、

自分の手でチャンスを掴みとる人生に歩みを進めていたのです。


じいちゃんと泣いた夜

大西さんの母方の実家は、熊本県玉名郡玉東町で80年以上続くみかん農家。

2020年1月、帰省した大西さんは、お酒を酌み交わしながら

それまで明かされなかったお祖父さんの想いを目の当たりにします。

「同じ味でも形が変だったり小さかったりするだけで、規格外になってしまう。

1年かけて大切に育てたみかんが、1kg10円にしかならないのはおかしい。

そう言いながら涙するじいちゃんを見て、一緒に泣いて……。

俺がどうにかしないといけないと思いました」

それから数ヶ月後、コロナ禍で時間ができた大西さんは

お祖父さんとの会話を思い出し、動き出します。

苦労したのは、ジュースを加工してくれる工場探し。

全国の搾汁技術を持った工場を探して何件も問い合わせましたが、

小ロットということもありなかなか協力を得られません。

そんなとき出会ったのが、長野県のとある工場。

そこでも規格外フルーツを使ったジュースを生産しているものの、

販路開拓に苦戦しているとのことでした。

ブランディングや販売促進は大西さんの得意分野。

そこで、お祖父さんのみかんに加え、

その工場で生産する林檎と葡萄のジュースも販売することにしました。


フルーツの救世主

9月に、クラウドファンディングをスタート。

大西さんの熱い想いは瞬く間に賛同を集め、無事商品化。

現在は、公式オンラインショップでの販売に加え、

熊本市や東京のカフェ・セレクトショップに卸しています。

大西さんがクリエイティブのコンサルを務めるパン屋「MORETHAN BAKERY」にも

The Fruits Companyのジュースが並んでおり、

廃棄されていたかもしれない玉東町のみかんは、今多くの人を楽しませています。


The Fruits Companyのジュースは、皮ごと絞っているのが特徴。

フルーツの自然の甘みと風味が楽しめます。

香料・人工甘味料不使用、果汁だけのストレートジュースは、

飽きのこない優しい味わいです。

また、洗練されたシンプルなデザインも、大きなこだわり。

フードロスや規格外フルーツの問題を解決する素晴らしいアイテムであっても、

世間で広まらなければ意味がありません。

特に若い世代に手に取ってもらうには、

彼らのファッションやインテリアを壊さない

どんなライフスタイルにも馴染むデザインであることが重要。

「単純に好きだから買う。結果的に、生産者や環境を守っていた」

これが、フルーツの救世主・The Fruits Companyが創るストーリーなのです。


ファッションの街・熊本

かつて熊本は、トレンド発祥の地と呼ばれるほど

ファッションタウンとして全国的に名高い街でした。

その名残で今もなお、セレクトショップが多く建ち並びます。

The Fruits Companyメンバーの德永龍平さんも熊本出身。

2人で、熊本をあの頃のように盛り上げたいという話をしているといいます。

「熊本の街を歩いていても、かっこいいなと思う人がたくさんいます。

県民のファッション性が高いので、みんなが集まれる場所があるといいですよね」

大西さんが留学時に勤めたサンディエゴのセレクトショップは、まさに目指す姿。

「ノースパークという熊本でいうところの上乃裏のような町にありました。

そのショップには、コーヒーを飲みにくる人、スケートボードを滑りに来る若者、

子供連れのお母さん、ただ話したいだけのおじいさん……

おしゃれな人もそうでない人も、本当にいろいろな人が集まってくるんです。

そんな、みんなが集まることができるコミュニティを熊本につくりたいと思っています。

古い洋館のような建物をリノベーションするのが理想です。

物件を探しているので、いいところがあったら教えてください(笑)」


加藤神社から望む熊本城

大西さんの熊本お気に入りスポットは、加藤神社。

「熊本城が大好きで、加藤神社にはよく行きます。

手水舎の横がちょうど開けていて、城がきれいに見えるところがあるんです。

学生の頃から、告白するならここと決めていました(笑)。

パワーがあるので、勝負するに相応しい場所だと思います。

加藤清正は、尊敬する偉人です。

清正のような地元に愛される男になりたい。そう思って、日々生きています。

そして、いつか銅像になりたいですね(笑)」


【大西裕輔】

1997年生まれ、熊本県熊本市出身。

東京を拠点とするディレクター、プロデューサー、フォトグラファー、フィルムメーカー。

個人での活動はもちろん、クリエイティブチームKNOWN UNKNOWNに

所属するなど活動は多岐にわたる。

クライアントのジャンルを問わず幅広く活動中。


KNOWN UNKNOWN

Instagram:@by_known_unknown

Instagram:@holydroopycat


The Fruits Company

URL:https://www.thefruits-company.com/


加藤神社

住所:熊本県熊本市中央区本丸2−1

URL:http://www.kato-jinja.or.jp/


《商品取扱店》Gluck Coffee Spot(グラックコーヒースポット)

Instagram:@gluckcoffeespot


《商品取扱店》tartelette(タルトレット)

URL:http://tartelette-cafe.com


(取材・撮影・本文:清原薫子)

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