みなさん、「熊本市動植物園」に足を運んだことはありますか? ここにしかいない動物や、園で生まれた赤ちゃんに出会えたり、ちょっと怖い猛獣たちを間近で見ることができたりと、熊本地震から復興し全面再開した園は驚きと感動がいっぱいです! さらに2029年の開園100周年に向けて、ますます進化中の動植物園を2回シリーズでご紹介します。
熊本市民のオアシス・江津湖のほとりにある動植物園
1929年に開園し、1969年に現在の場所に移転した「熊本市動植物園」は、総面積24.5ヘクタールの敷地内に3つのエリアがあり、約124種・671頭(令和6年6月30日現在)の動物たちがいる動物園エリアと、四季折々の花々が楽しめる植物園エリア、観覧車などの遊具がある遊園地エリアで構成されています。
正面ゲートを抜けると、広々とした空間が広がり、早速、クロクモザルとリスザルが目の前の島で伸び伸びと遊んでいます。
お話を伺ったのは、飼育展示第2班・主幹の溝端菜穂子さん。後ろでクロクモザルが元気に動き回っています。
「動植物園には皆さんが楽しんで過ごせるレクレーションの場だけでなく、種の保存や自然環境教育を学ぶ場という役割があります。ここで暮らす動物たちは、元々は野生動物です。それぞれの動物が持つ習性や行動に配慮しながら、時にはその能力を引き出すような工夫をしながら、みなさんに少しでも動物に興味を持ってもらえるよう、魅力的な展示に取り組んでいます」。
その魅力の一つが、間近で動物たちを見ることができる点です。
ホッキョクグマのマルルは、大きなプールで泳ぐ様子や放飼場のおもちゃで遊ぶ様子を上から眺めることができます。
さらに、プールサイドの窓からはこんなに近距離で!
このなんとも言えない表情!
ライオンもこの距離!両サイドは金網になっており、そこで寝ている時は鼻息を感じるほど。たまに来園者に唸ることもあり、その迫力のある声に、子どもだけでなく大人も驚くほど。昼間は寝ていることが多く、ゴロゴロとしている姿は大きなネコのようです。
レッサーパンダ舎では、頭上を行き来する姿に出会えることも。2023年6月に園で生まれた杏香(あこ)は、すくすくと成長し、母親・シンファよりも大きくなっています。
絶滅危惧種の動物たちに会って、なぜ?を考えよう
地球温暖化や気候変動、森林破壊、密猟などのさまざまな問題から、動物たちの暮らす自然環境が変化し、なんと1年に4万種以上の生き物が絶滅していると言われています。園で暮らす動物たちの中には、すでに野生では絶滅しているなど、「IUCN絶滅危惧種レッドリスト※」に指定されている動物たちに出会えるのも貴重な体験になります。
※「国際自然保護連合(IUCN)」が作成している絶滅の恐れのある野生生物の種のリスト
希少な動物の中には、日本では「熊本市動植物園」だけにしかいない動物もいて、それがキンシコウです。今年20歳になるヨウヨウ(優優)が一匹で暮らしています。
野生では沼地に生息していることもあり、水たまりの中でお昼寝中のシフゾウも、実は日本の動物園に4頭しかおらず、メスは「熊本市動植物園」のみ!
こちらはメスのアリサ。気持ち良さそうに水たまりにつかっています。
そのほかにも、熊本で全て揃って展示されているのはここだけという「肥後五鶏」もいて、ニワトリの先祖・セキショウヤケイは、かわいいヒナがウロウロしています。
また、今の国内の野生動物とヒトとの関係について考えさせられる展示もあります、それが、ニホンザルエリアです。
深い木々に覆われたこの場所は、ニホンザルが暮らしていた相良村の山を再現しています。
「ニホンザルが民家のあるエリアに出没しているというニュースを見かけると思いますが、今、何が起きているのか、野生動物とヒトの関係がどうなっているのかを考えてもらう展示になります」と溝端さん。
ニホンザルをはじめとした野生動物が住む「奥山」とヒトが住む「人里」の緩衝地帯として存在していた「里山」。
昔、里山には人が木を植えたり、筍を取ったり、シイタケを栽培したりと管理されていましたが、現在は管理する人も減って放棄され、緩衝地帯としての役割を果たせず、奥山と人里が近くなってしまいました。そのため、本来奥山にすむニホンザルが人里に出没しやすくなったのです。ニホンザルエリアの展示では、この里山と奥山を再現しており、そこで暮らすニホンザルの様子をうかがうことができます。
動物たちに出会いながら、さまざまなメッセージを発信している「熊本市動植物園」。開園100周年に向けて、リニューアルを控えた獣舎もあり、その中の一つが「ふるさと自然エリア」です。
令和6年9月にオープン予定で、国内で絶滅の危機に瀕したイヌワシやムササビ、タンチョウ、マナヅルに出会えるだけでなく、今、日本のどんな野生動物に何が起きているのか?を伝える展示が用意されています。
さらに注目!おすすめの動物園の歩き方
動物たちの本来の習性や行動に無理がないように配慮された「熊本市動植物園」では、この時間帯でしか見られない!というタイミングも多く、おすすめは開園直後です!
「花の休憩室」で暮らすフタユビナマケモノのベビドンは、普段、樹上で動かずに過ごしているので見つけるのもひと苦労。
開園直後に行われる飼育員さんのエサやりタイミングに合えば、こんなかわいい姿に出会えることも!
毎朝9時15分ごろからは、ゾウ舎の中でトレーニングが行われ、ガラス窓越しに見学することができます。
ゾウ舎内では、飼育員と獣医師によって、ハズバンダリートレーニング(※2)が行われています。大きなゾウが飼育員の指示に従い、かがんだり、脚の裏を見せたりする様子は感動ものです!
※2 必要な時に検査や処置がスムーズに行えるように、普段から必要な体制をとることができるようにしておくトレーニング
動物の体調などによって変化するので時間の確定は難しいですが、チンパンジーアイランドで過ごす5人の姿を見つけるのも、楽しみの一つです。木々に覆われた島に、毎日2回ほど出てくるチンパンジーは、木にのぼったり、フルーツなどのおやつを見つけたりして過ごします。
たくさんの動物たちに出会える「熊本市動植物園」。来園者の中には、推し動物がいて何度も訪れる熱烈なファンがいるほど!カメラに望遠レンズを装着したり双眼鏡を持参したりすると、より迫力のある姿を見ることができるのでおすすめです。
■熊本市動植物園
所在地:熊本市東区健軍5-14-2
問い合わせ先:096-368-4416
営業時間:9:00〜17:00(夜間開園はHPで確認を)
休み:月曜(祝日の場合は翌日)
構成・取材・文・撮影/今村ゆきこ
※写真の一部は借用したものを使用しています
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