コロナ禍で中止が続いていた熊本の夏の風物詩「江津湖花火大会2023」が、4年ぶりに復活!8月26日(土)19時15分から、熊本の夜空に大輪の花を咲かせます。今回は、「江津湖花火大会」の歴史を紐解きながら、花火大会を支える花火師にもインタビュー。花火づくりにかける思いや「江津湖花火大会」の見どころなどを紹介します。
始まりは上江津湖。火の国まつりのハイライトとして開催
夏休み終盤の一大イベントと言えば「江津湖花火大会」。熊本市民にとっては、夏の風物詩として長年親しまれてきた特別な催しです。夏休み最後に家族でお出かけシーンや恋人との淡い思い出がよみがえる人も多いのではないでしょうか。
もともと花火は1726(享保11)年の大飢饉の際に、将軍徳川吉宗が慰霊と悪霊退散を願い花火を打ち上げたことに由来し、今でも死者の霊を供養するお盆近くに鎮魂の意味を込め打ち上げるところも多いようです。
「江津湖花火大会」の始まりは、1978(昭和53)年。火の国まつりのハイライトとして「水の都」を象徴する上江津湖で開催されました。「江津湖花火大会」としてはここがスタートだったようです。
その後1979(昭和54)年は、上江津湖と藤崎台球場(現リブワーク藤崎台球場)の2カ所で開催。1985(昭和60)年は下江津湖と藤崎台球場、2005(平成17)年には藤崎台球場のみと、その年によって場所を変え実施されてきました。
2015(平成27)年からは、現在の開催場所である下江津湖で開催され、2023年8月26日4年ぶりとなる開催においても、下江津湖が会場として決定。地域住民などの協力を得ながら着々と準備が進められています。
●江津湖花火大会の会場変遷(過去開催分から抜粋)
1978(昭和53)年:上江津湖
1979(昭和54)年~1984(昭和59)年:上江津湖と藤崎台球場
1985(昭和60)年~1990(平成2)年:下江津湖と藤崎台球場
1991(平成3)年:雲仙普賢岳の噴火で中止
1992(平成4)年~1998(平成10)年:上江津湖と藤崎台球場
1999(平成11)年~2004(平成16)年:上江津湖
2005(平成17)年~2010(平成22)年:藤崎台球場
2011(平成23)年~2014(平成26)年:東日本大震災や明石市の花火大会事故を受け中止
2015(平成27)年:下江津湖(ミュージック花火スタート)
2016(平成28)年:熊本地震で中止
2017(平成29)年~2019(令和元)年:下江津湖
2020(令和2)年~2022(令和4)年:コロナ禍で中止
2023(令和5)年:下江津湖で開催予定
美の競演の立役者・花火師の大会にかける想いとは
熊本の花火大会を支えてきた金田花火(西区花園町)は、1887(明治20)年創業の花火製造業者。136年の長きにわたり、夏の夜を彩る“美の競演”の立役者となっている事業所です。
花火師歴22年という中野和比古さんは、2004(平成16)年に同社に入社。以来、「江津湖花火大会」の花火製造から、総合演出も手掛けるベテラン花火師です。
中野さんが花火師になろうと決心したのは中学生の時。以前は、北区の自宅からも江津湖の花火が見えて、家族も夏の終わりの楽しみにしていたそうです。しかし時代の流れとともに街の様相が変わり、以前まで見えていた美しい花火が見えなくなってしまいました。「ふと隣で、『江津湖の花火が見られなくなって寂しいね』と話していた祖母と母の会話を聞き、自分が花火師になろうと心に決めました」と語ります。
現在、同社の工場長として花火大会の花火の製造とミュージック花火のプログラミングなどにも関わる中野さん。花火の演出は日進月歩で、毎年何かが改良されており、色の種類などにも変化が見られるのだそうです。「ミュージック花火は、これまでの見るだけの楽しみから、音楽とシンクロしたドラマティックな競演が楽しめる」と言います。
「江津湖花火大会」でも中野さんが3曲をセレクト。「皆さんが聞いたことのある、しかも心に残る音楽をセレクトしました。それぞれの思いを胸に、花火と音楽を楽しんでほしいです」。
大きな華やかな花が咲き、しだれ桜のように緩やかに落ちていく「冠(かむろ)」は、クライマックスで登場。点滅しながらさまざまな色を放つ花火など、今年の江津湖花火大会も見どころいっぱいです。
「実は自分の中で、100パーセント納得いく花火を打ち上げられたことはまだないのです。地元を離れておられる方にも、『江津湖の花火大会があるから熊本に帰省しよう』と思ってもらえるような花火を上げていきたいです」と力を込める中野さん。
「コロナ禍で、花火のイベントが軒並み中止となりましたが、今年は私たち花火師も花火を上げさせていただける喜びを噛みしめながら参加します」と、最後の準備に汗を流していました。
湖面に映る花火が楽しめる見どころスポットも
開催当日は、下江津湖広木公園奥が打ち上げ会場となり、約1万発の花火が半径65メートル、高さ160メートルの大迫力で打ち上げられます。
例年多くの見物客でにぎわいますが、今年は4年ぶりの開催とあり約15万人の人出を見込んでいるそう。大会本部があり、多くの飲食店の屋台が並ぶ下江津湖広木公園は、健軍電停から直線でつながるルートのため一番賑わうスポットとなります。
一方、絶好の見物ポイントとなり意外と知られていないのが、下江津湖の西岸に位置するエリア。「西岸は比較的人も少なく、正面に上がる花火と湖面に映し出さる花火を両方楽しむことができますよ」と、熊本市イベント推進課の金光良昌さんが教えてくれました。
また当日は、大規模な交通規制が行われます。会場周辺は車両の通行が禁止となるため、臨時シャトルバスが3経路で運行されます。
A経路:城彩苑⇔観覧会場西側往復
B経路:熊本駅新幹線口⇔嘉島町総合運動公園
C経路(帰路のみ):健軍電停北側⇒熊本市役所
※往復バス代金は400円(事前発売は300円)、C経路の片道は200円
※シャトルバスの事前購入は、ローソンサイト/ローソン、ミニストップ店舗Loppiで
このほか、臨時駐輪場や臨時タクシー乗り場も設けられていますので、事前に下記HPなどでご確認の上、お出かけください。
「花火大会が開催できるのも、地域住民の方や関係各所のご協力があってこそです。安全第一に、みんなで楽しめる江津湖花火大会が成功するよう市民の皆さまのご協力をよろしくお願いいたします」
■江津湖花火大会2023
日時:2023年8月26日(土曜)※荒天の場合は翌日8月27日(日曜)に順延
19時15分~
会場:下江津湖周辺(水前寺江津湖公園広木地区)
交通規制や開催に関する詳細は、下記URLからご覧いただけます。
https://hanabi.kumamoto-guide.jp/index.html
(構成・取材・文・撮影/大平誉子)※花火の写真は借用しています
同じテーマの記事
-
熊本のブロガーけんさむが選ぶ【郷土料理じゃないけど、あえて熊本で行きたいお店】
2019.09.19
-
古き良きものを生かしたまちづくり「川尻商店 粋(すい)」
2021.12.08
-
古き良きものを生かしたまちづくり 町屋のファサードがショーウインドーに!
2023.03.22