“火の国熊本”の夏を彩る祭りと言えば「火の国まつり」。

軽快なサンバのリズム♪が聞こえてくると、自然と体が動き出す人も多いのではないでしょうか。

かくいう私もその一人。あのサンバホイッスルを聞くと、いてもたってもいられません。

夏の暑さを吹き飛ばす火の国魂が、沸き立ってきます。


2020年、21年、そして残念ながら今年もコロナ禍でやむなく中止となってしまいましたが、

「火の国まつり」は私たち熊本市民の心の故郷。

その歴史を振り返りながら、今年ならではの楽しみ方を見つけてみましょう。

始まりは1978(昭和53)年。熊本市民自らが作り上げる祭りに

思い思いの衣装で祭りに華を添えます。1978(昭和53)年開催
思い思いの衣装で祭りに華を添えます。1978(昭和53)年開催
1983(昭和58)年開催の火の国まつりの様子
1983(昭和58)年開催の火の国まつりの様子

熊本を代表する祭りの一つ「火の国まつり」。当時は伝統芸能披露などのオープニングイベントからアーケード内や市中心街を大勢の市民が練り歩くおてもやん総おどり、最終日のクライマックス・花火大会まで。3日間のイベントは熊本の夏を象徴するお祭として長年親しまれてきました。

仕立てたばかりの浴衣を着て、総踊りを見に行く家族連れや夜空に浮かぶ大輪の花火を見ながら肩を寄せ合う微笑ましいカップルの姿も多く見かけたものです。

「あなたが主役!」。祭りの名付け親も総踊りの振り付けも市民主導

「火の国まつり」が始まったのは1978(昭和53)年、今から44年前にさかのぼります。

それ以前も熊本市では、1948(昭和23)年頃までは「招魂祭」、1949(昭和24)年から1972(昭和47)年までは旧「火の国まつり」、1972(昭和47)年から1977(昭和52)年までは「肥後ばってん祭」など、名称を変えて祭りが行われていたそうです。

当時を知る熊本県日本舞踊協会理事長の藤間富士齋(ふじさい)さんは、「昭和30年代の火の国まつりと言って真っ先に思い出すのが『火の国音頭』。三味線と太鼓、長唄の生演奏で、市民が集い踊る、とても風情あるお祭りでした。今でも70代、80代の熊本市民の方はこの音楽と踊りが体にしみついていて、誰でも踊れるはずですよ」と当時を懐かしみます。

テーマおてもやんの振り付けを依頼された県日本舞踊協会理事長の藤間富士齋さん
テーマおてもやんの振り付けを依頼された県日本舞踊協会理事長の藤間富士齋さん

時代の流れと共に祭りそのものも変遷を遂げ、熊本に住む一人一人が、ふるさと熊本を誇りあるものにしていってほしい―。そんな願いを込めて、1978(昭和53)年に全市をあげた新たな「火の国まつり」が誕生しました。

“あなたが主役”のキャッチフレーズ通り、祭りの名称も市民が名付け親。メインイベントおてもやん総おどりも、「誰もが気軽に参加でき、“成長するまち”を現す祭り。そして、よりローカル色のある踊りを取り入れたい」という事務局からの要望で、藤間さんら県日本舞踊協会のメンバーで振り付けを考えたそうです。

熊本と言えば『おてもやん』。若い人たちも参加できる、明るく、元気な踊りにしてほしいという事務局の思いと、おてもやんのはつらつとしたチャーミングなイメージが重なり、現在の「テーマおてもやん」の踊りが完成したそうです。しかし、完成形に近づくまでには、かなりの日数を要し、「二転三転しながら、ようやく完成したときはホッとしました」と藤間さん。いろいろな人の思いが詰まり、現在の「火の国まつり」がありますが、「いつの日か、あの風情ある『火の国音頭』の復活にも期待しています」と語ります。

市民の熱意が祭りを盛り上げる起爆剤に

「おて~も~や~ん あんたこの頃嫁入りしたではないかいな♪」の歌詞で広く県民に愛されている「テーマおてもやん」の振り付けが出来上がると、次はこの歌に合わせて藤間さんほか、県内の日本舞踊家が熊本市内の校区や事業所などで講習会を開き、踊りの指導を行ったそう。練習回数は何と、延べ130回にもおよんだと言います。

この踊りをみんなで練習することで、校区や事業所の団結力が高まってくるという声も聞かれたそうです。「市民みんなで作り上げる祭り」というコンセプト通り、市民の祭りに対する思いがどんどん膨らんでいきました。

そして、新しく誕生した第1回目の火の国まつりには総勢1万6000人の市民が参加。見物客も30万人という、これまでに例のないにぎわいを見せました。

熊本駅新幹線口で可愛いらしい姿を見せる「おてもやん像」
熊本駅新幹線口で可愛いらしい姿を見せる「おてもやん像」

公募で選ばれた「サンバおてもやん」の振り付け

民謡の「テーマおてもやん」に続き、第3回目の「火の国まつり」で誕生したのが、あの陽気なカーニバル調の「サンバおてもやん」です。リオのカーニバルを思わせるようなサンバホイッスルに、軽快なリズム。暑い熊本の夏祭りをさらに熱く盛り上げる踊りとして親しまれ、今では「火の国まつり」と言えば、こちらの音楽のイメージが強い人も多いかもしれません。

この「サンバおてもやん」。専門の方が振り付けを担当されたのかと思いきや、実は参加団体からの公募で選ばれたものだそう。

新たなサンバおてもやんの振り付けが決まると、これまで同様、企業や幼稚園、保育園など、さまざまな参加団体への指導が始まりました。

指導の中心となったのは、現在「火の国まつり愛好会」の代表を務める松本恵子さんら県内の舞踊家の皆さん。「私たちの団体は、第1回から火の国まつりに参加しています。県内外はもちろん、これまでにハワイにも出かけて、火の国まつりの魅力を広めてきました。『おてもと彦しゃん』の踊りは、どこに行っても目を引き、愛されていると感じます」

火の国まつり愛好会代表の松本恵子さん
火の国まつり愛好会代表の松本恵子さん
火の国まつりを盛り上げる花電車(第4回開催時)
火の国まつりを盛り上げる花電車(第4回開催時)

「火の国まつり」を市民が作る祭りとの位置づけから、参加する人だけでなく、見る人にもさまざまな形で祭りを楽しんでもらいたいとPR活動にも力が入れられました。

祭りが近くなると、きらびやかな装飾をした花電車を見かけた人も多いと思います。「当時は、熊本の観光をPRするミス熊本や肥後六花に選ばれた女性の方々が電車に乗り込み、沿道の市民に手を振りながら、祭りを盛り上げておられました」と松本さん。この時季だけ登場する電車とあり、花電車を心待ちにしていたファンもいたそうです。

祭りの醍醐味(だいごみ)は、自分自身が楽しむこと

今年80歳になる松本さん。凛とした佇まいに明るい笑い声が印象的です。サンバのリズムが流れると、スイッチが入ったようにキレッキレのダンス!ダンス!! 松本さんの笑顔に魅了されるファンも多いと聞きます。

「踊りに参加する人は、最初は恥ずかしがって小さな所作で踊っている人もいますが、祭りの醍醐味(だいごみ)は、自分自身が楽しむこと。手の指先から足のつま先まで、全身を使い“おてもやん”になりきらなきゃ。だって、その方が楽しかじゃなかですか」と笑います。

「テーマおてもやんには基本の振り付けがありますが、最近はサンバおてもやん同様、各団体がそれぞれ、趣向を凝らした振り付けで踊っておられます。振り付けのダイナミックさ、ユニークさ、そして華やかな衣装楽など、楽しめる要素がたくさんあります」と松本さん。

思い思いの衣装でおてもやんになりきる参加者、1982(昭和57)年
思い思いの衣装でおてもやんになりきる参加者、1982(昭和57)年
1983(昭和58)年の火の国まつりの様子
1983(昭和58)年の火の国まつりの様子

これらの踊りを総合的に評価して、毎年順位を競うコンテストや、祭りの様子を写真に撮って応募するコンテストもあるそう。次回の開催時は、どの団体の踊りが選ばれるのか、自分も採点しながら見てみるのもいいかもしれませんね。

2018(平成30)年のフォトコンテストグランプリの作品
2018(平成30)年のフォトコンテストグランプリの作品
同年のフォトコンテスト準グランプリの作品
同年のフォトコンテスト準グランプリの作品

そして、「どうしても自分も踊りたい!」という人には、例年飛び入り参加枠も設けられています。当日は、簡単な踊りの講習もありますので、次こそはあなたも火の国まつりの“主役”になって踊ってみるのもいいですね。

次回の開催まで待てないという人は、ぜひおうちで“おてもやん”になりきって踊ってみてください。下記サイトで振り付けを紹介しているので、それぞれの楽しみ方で今年ならではの「火の国まつり」を楽しみましょう。



※火の国まつりの実施要項、「テーマおてもやん」「サンバおてもやん」の振り付けなどは、下記URLから確認できます。

https://kumamoto-guide.jp/hinokunimatsuri/

振り付けのYouTube

https://www.youtube.com/watch?v=GkBx1IYUT08


(構成・取材・文・撮影/大平誉子) ※写真の一部は借用しています

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