熊本の夜の街でご飯やお酒を楽しめば、「もう1軒…!」となるものです。そんなときにオススメしたいバー2軒をご紹介します。美味しい、楽しいだけではなく、「熊本」を十分に味わえる魅力がたっぷりです。熊本の名物など美味しい食事に舌鼓を打ったら、珠玉のお酒のひとときを過ごしてくださいね。
熊本らしさが詰まった、「ここでしか飲めない」一杯を。「夜香木(やこうぼく)」
熊本市中心街の上通・並木坂の路地裏にあたる「上乃裏」地区。古い建物をリノベーションした味わいあるショップや飲食店が多いエリアです。この一角にあるのが「Bar 夜香木」です。
築約150年の旅館だった建物をリノベーションして作られたという、こちらのお店。木戸の奥に続く石畳の通路を進むだけでも、気持ちが盛り上がります。ちなみに2階には、熊本の素材を楽しめる居酒屋ガストロノミー「瑠璃庵」があります。
通路の奥に、隠れ家のようなひっそりした空間のバー、「夜香木」がありました。カウンター席とテーブル席、合わせて15席ほど。20時までであれば席の予約ができるので、「絶対に『夜香木』の1杯を愉しみたい」という人には事前の予約がオススメです。
出迎えてくれたのは、同店のオーナーであるバーテンダー・木場進哉さん。熊本県出身で、熊本市内や東京のバーで働いた後、バー文化のアジア最先端の地・シンガポールで5年にわたって活躍したという経歴の持ち主です。その後、帰熊。地元・熊本の趣深い街並みの中で、「熊本でわざわざ飲みたい一杯を提供したい」との思いで、2020年にここ「夜香木」をオープンしました。
木場さんは2021年に、約50ヵ国で予選が行われる世界最大級のカクテルコンペティション「DIAGEO WORLDCLASS」の日本チャンピオンとなり、世界大会にも出場。さらに、お店も2023年に九州で初めて「ASIA’S 50 BEST BARS」のアワードで84位にランクインするなど、その知名度は日本中、世界へと広まり、各地からこのお店を目指してくる人も多いとか。木場さん自身も、全国・世界各地へゲストバーテンダーとして呼ばれることも。とはいえ、「敷居を高く感じて欲しくはないんです。バー初心者の方も、気軽に立ち寄れるお店でありたい」と優しく微笑む木場さん。
同店にチャージはなく、卓上にはメニュー表があり価格や味の特徴、お酒の強さの程度も明記されているので、安心です。そして何より、1杯1,600円〜(2024年6月現在)そろうカクテルのラインナップに注目です。メニュー表にある12種全てが、ここでしか味わえない「夜香木」オリジナルレシピのドリンク。しかも、熊本県産のお酒やハーブ、果物など、熊本の「地のもの」をふんだんに使ったカクテルばかりなのです。
木場さん自ら生産者の元へ赴き、お酒や食材などの素材の美味しさはもちろん、作り手の思いまで汲み取り表現できるような一杯を創り続けているといいます。カクテルを注ぐグラスにも、県内の陶芸家の作品を多く使っています。
「熊本は農業大国で食材が豊富ということはもちろんですが、焼酎・日本酒・ワイン・ビール・ウィスキー・ジンとあらゆるお酒が造られている県でもあります。この地の魅力も発信していきたい」と語る木場さん。時にはお客様からの情報で生産者の元へ足を運ぶこともあり、そのような情熱と行動力が、多くの人が酔いしれる珠玉の一杯を作り上げています。
バーの名を冠した一杯、「ヤコウボク」。夜香木はナイトジャスミンとも呼ばれる、夜にだけ花が咲く植物です。この花の原産地・東南アジアでは、日中は暑いので虫たちが動き始めるのは夜のみ。その際、虫たちを呼び寄せ受粉してもらえるよう、強い芳香を放ちます。その神秘的な在り方にひかれて店名に採用したのだそう。
そしてこのカクテル「ヤコウボク」も、夜香木が放つジャスミンやアップル、ハチミツの薫りを再現。ジンベースのカクテルで、口にした瞬間に鼻に抜ける芳香に、柔らかな甘みと爽やかさを感じられる味わいの、魅惑の一杯です。ちなみに、カクテルの上に乗っているスパイスのマーガオは、受粉で呼び寄せられた虫たちをイメージ。
そしてもう一杯、観光客にも人気なのが、「Kumamon City 75」です。もともと、フレンチ75という定番カクテルがあるのですが、これを熊本の素材でアップデートした一杯です。人吉市・高橋酒造のクラフトジン「ベアーズブックジン」と、熊本市・熊本ワインの「醸音(かものね)スパークリングワイン」にシトラス、ネロリ、ソーダでアクセントに山椒が加わった、薫り豊かで大人な風味の一杯です。
一杯口にするごとに、その背景にある物語や熊本の食の豊かさまで感じられるような、奥行きのあるバータイムを過ごせる「夜香木」。熊本を芯まで楽しみ尽くしたい方に、ぜひオススメしたい一軒です。
■夜香木 (やこうぼく)
電話:090-8408-5211
所在地:熊本県熊本市中央区南坪井町5-21
営業時間:18:00〜24:30
休:不定
Instagram:@bar_yakoboku_kumamoto
球磨焼酎を深く知り、もっと好きになれるバー。「球磨焼酎専門バー 69spirits (ロック スピリッツ)」
熊本市役所近くの路地裏にある建物の地下1階にひっそりとある、小さな看板。ここには、焼酎好きな人にぜひオススメしたいバー「69spirits(ロックスピリッツ)」があります。
店内に入ると、まず目に留まるのは、ズラリと並ぶ焼酎の瓶。こちらは、焼酎の中でも「球磨焼酎」だけを専門に取り扱うバーなのです。
「69spirits」を営むのは星原克也さん。新聞社で記者として長年、活躍してきたという経歴の持ち主です。新聞社を退職しお店を出そうと決めたとき、ふと気になったのが、熊本が誇る球磨焼酎のこと。ウィスキーのスコッチやワインのボルドーのように、商品名に産地を表示できる「地理的表示(GI)」が認められている焼酎なのに、意外とその知名度が高くないと感じていたのだそうです。実際、球磨焼酎「専門」のお店は熊本県内でもほとんどなかったそう。
500年の歴史を持ち、古くからお米で焼酎を造ってきたことの歴史的価値も大きく、蔵ごとにこだわりが光る味わいの魅力も尽きない球磨焼酎。熊本の人でさえ、この価値を知る人が少ないという現状を見て、「自身がスポークスマン的な存在になって、この球磨焼酎の魅力を伝え広めたい」と、2017年に球磨焼酎専門のバーとしてオープンしました。
「69spirits」という店名には、球磨焼酎にこもった土地の魂(spirit)、星原さんの生まれ年の1969年、オープンの年に娘さん達が6歳と9歳だったことなどに由来します。
こちらに揃うのは、球磨焼酎全27蔵、約250種の焼酎たち。各蔵の定番のものから、長年熟成させた希少なもの、限定のレアなものなど、多種多様に揃います。ちなみに棚の並び順は、蔵の所在地が球磨川の上流(水上村)から下流に向かっていく順なのだそう。
一言に「球磨焼酎」といっても、蔵ごとに歴史やこだわりがあり、物語があります。星原さんは記者仕込みのフットワークの軽さで人吉球磨地域を訪れては各蔵元との交流も繰り返しているそうです。そしてお店を訪れる人に、その一つ一つを熱く、楽しく伝えてくれます。観光客の方はもちろん、地元・熊本の人にとっても新鮮で興味深いお酒の時間です。実際、地元の常連客の割合も多いのだそうです。
初めて同店を訪れる人や球磨焼酎初心者の人向けには、小さな猪口で楽しめる「3種飲み比べセット」を。星原さんがヒアリングしながら、オススメの3種を選んでくれます。「例えば、昔ながらの常圧蒸留と減圧蒸留、2つの蒸留法があって、それぞれ味の特徴があり、蔵によって思いを持って、どちらか、もしくは両方の製法で造っています。そのような違いやと魅力も感じて、自分好みの一杯を見つけていただけると思います」と星原さん。
ちなみにこの猪口は、球磨焼酎の各蔵元で作られていたもので、蔵の名前が入っていたりかわいい色柄があったりと様々。もう製造されていないものも多いそう。
熊本県内の若手作家によるカップを集めているそうです。これで呑むと、また味わいが増しそうです。
星原さんオススメの飲み方が、直火で燗つけしたものを、氷入りのカップに注ぎロックでいただく方法。球磨焼酎の昔ながらの酒器・ガラチョクで燗つけします。適温になると、紫色だった肥後椿の花がピンクになるという代物です。
一度、直燗してロックにすると、口当たりがまろやかになって飲みやすくなり、また新たな美味しさをたのしめるのだそうです。
最近では、球磨焼酎を愛する地元の大学生のサークルとコラボして、球磨焼酎のさらなる魅力発信活動を進めているほか、「球磨焼酎特使」にも任命された星原さん。
このお店に来れば、球磨焼酎の真髄と魅力を、心ゆくまで体感することができるはずです。
■球磨焼酎専門バー 69 spirits(ロック スピリッツ)
電話:096-321-6292
所在地:熊本県熊本市手取本町2‐7 和光ビル地下
営業時間:19:00頃〜
休:不定 ※営業日・時間は不定なので、お問合せを
Instagram:@ 69spirits_kumamoto
同じテーマの記事
-
【お土産座談会】 ジャーニージャーナル編集部が、イチオシの熊本土産について語る!① 〜スイーツ編〜
2023.07.21
-
熊本の建築からはじまる、熊本の歴史語り 【3】夏目漱石内坪井旧居
2023.09.25
-
ライトアップされた熊本城やカクテル、音楽を楽しむ「OMO5熊本 by 星野リゾート」の夜
2024.04.01