熊本は、郷土のおやつに「いきなり団子」があるほど、サツマイモ料理に馴染みが深い地域。そのまま焼いたり、天ぷらにしたり、団子にしたりと、おやつにもなるし、おかずにもなるし、と重宝されている食材の一つです。
そんな、身近な存在のサツマイモが、近頃、注目を高め、専門店が続々とオープンしているのはご存知ですか? その中から、こだわりが詰まった3件を取材しました。
天草生まれの「がね揚げ」が進化! 見た目もキュートなスイーツたち
新町から大江に2021年1月に移転した「おいものおやつ」は、天草の郷土料理「がね揚げ」の専門店。がね揚げとは、サツマイモを細切りにして衣をつけて揚げたもので、天草地方では家庭料理として愛され、法事などで集まる際には手土産として持たせる風習があるということ。
「がね揚げは、子どもの頃から大好きで食べていました。お店で買うというより、家で作るもの。それぞれの家庭の味があるんですよ」。天草出身の店主・岩崎さんが、この美味しさをみんなにも味わって欲しい!とオープンしたお店なのです。
使用するサツマイモは、契約農家が手がける大津の熟成イモのみ。
「サツマイモのおやつは、年齢を選ばず、幅広い世代に愛されている料理の一つ。それに、熟成の技術などもあり、イモ自体が本当に美味しくなりましたよね。だから、この美味しいイモを使って、天草の郷土料理のがね揚げを作ったら、たくさんの人たちに喜んでもらえると思いました」と岩崎さん。
サツマイモ選びだけでなく、衣の塩気・甘みまで微調整し、研究を重ねて完成したがね揚げは、控えめな甘さとサックリとした食感が絶妙。
「自分自身も胃もたれしやすいので、脂っこさを最小限まで押さえた仕上がりにもこだわっています」と、益城の「坂本製油」から仕入れたなたね油のみを使用し、注文のたびに揚げたてを提供するので、サクッとした食感とあつあつを楽しめるがね揚げを提供しています。
ソフトクリーム(3月〜11月の期間限定販売)のトッピングが人気になり、レギュラー商品として登場予定の「おいものミルフィーユ」も注目です。
ソフトクリームやジェラートのほか、冷たいスイーツも開発中ということなので、さらなる進化系サツマイモスイーツが楽しみです。
■ おいものおやつ
問合せ先:080-2794-0427
所在地:熊本市中央区大江6-24-5
営業時間:11:00〜19:00
休み:月・火曜、その他イベント参加時には休みの場合もあり
熊本で愛される山「金峰山」の名前を背負って、 新たな熊本土産を提案中!
「熊本の新しい定番土産になることを目標に、郷土のおやつ“いきなり団子”の進化系スイーツを提案しています」。オーナーの和田さんは、「茂平」や「馬タン牛タン」など、街なかで飲食店を営むグループ会社の代表。
「熊本の名物に特化したお店をしたい」という目標を掲げていたところ、サツマイモの生産者やパティシエとの出会いがキッカケで、夢が動き出したそうです。
「コロナ禍によってサツマイモの消費量の減少に伴い生産量が減少したことから、生産者のみなさんが困っていることを聞き、どうにかお役に立てないか…と考えました。そこで、以前より叶えたかった熊本の新名物開発の一環として、イモの創作スイーツをテーマにしたお店をオープンすることにしたんです。イモの創作スイーツを通して、熊本のサツマイモの美味しさを全国に知って欲しいと考えています」。
同店が提案する“いきなり団子”の進化系スイーツとは、オリジナルのいきなり団子はもちろん、熟成サツマイモとあんこ、求肥を使った「いきなり蒸し洋かん」や、モンブラン、スイートポテトなど、ラインアップは和から洋まで様々。
中でも、「白ケ峰(しろがみね)」は、サツマイモとホワイトチョコレートを合わせたショコラテリーヌで、「サツマイモがこんなに上品なスイーツになるなんて!」と驚くこと請け合い。自分用に食べて美味しかったからと手土産用に買いに来るお客さんも多いとか。
イートインスペースでは、イモのパフェや絞りたてのモンブランも食べられるので、そちらも注目。馴染み深いサツマイモの新たな魅力に出会いに出かけて。
■ 芋の創作スイーツ 金峰山堂
問合せ先:080-3944-3867
所在地:熊本市中央区安政町1-25石澤ビル1F 下通アーケード ココサ前
営業時間:13:00〜21:00(イートインは18:00まで)
休み:不定休
焼きいもの概念が変わる! 懐かしくて新しい味わいを発信
「極蜜熟成やきいも」を看板メニューに1月にオープンした「芋ぴっぴ」は、愛媛を皮切りに年内40店舗オープンを目指し全国展開している焼きいもの専門店。新しいことにチャレンジしたい!と、美容業界で活躍してきた企業が新事業としてスタートしたそうです。
「ここ数年、専門店が流行しているので、次は何が来るか?と考えた結果、焼きいもに注目したんです。老若男女に愛されてきた焼きいもをとことん追求すれば、流行という一過性のものではなく、愛され続けるものになるんじゃないかと思って。美味しさを追求した結果、蜜があふれ出る甘さとなめらかな食感の焼きいもを実現しました。今までの概念が変わると思いますよ」と広報の佐藤さん。その時期に美味しいサツマイモを、温度13℃・湿度85%でキュアリング貯蔵。3カ月熟成されたイモは糖度が50度以上にもなるそうです。
焼き方にもこだわり、ねっとりとした口あたりとまるでスイーツのような甘みに仕上がった焼きいもは、そのままはもちろん、冷たいアイスとも好相性で、「焼き芋ブリュレ」や「焼き芋ハニーバター」「焼き芋アイス」などがメニューに並びます。
■ 芋ぴっぴ。熊本店
問合せ先:096-326-1234
所在地:熊本市中央区上通町8-23イワサキビル1F
営業時間:11:00〜19:00
休み:なし
タピオカやマリトッツォなど、それまで身近になかった食文化の登場が続くスイーツ業界。一方、サツマイモスイーツは、これまで私たちの身近にあった食材を生かしたスイーツなだけに、年代問わず親しまれやすいことが、専門店続出の理由のようです。
とはいえ、それぞれ、「さらに美味しく!」を目指したスイーツは、それぞれに感動を覚える味わいばかり。「流行」ではなく、定番になる可能性を秘めているスイーツを、ぜひ味わってみてください。
(構成・取材・文・撮影/今村ゆきこ)※「金峰山堂」の写真は一部借用しています
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