最大震度7の揺れが二度発生し、甚大な被害をもたらした熊本地震から4年。
市民の心の拠り所、熊本城の復興に向かっていく過程を間近に見守ることが出来るようにと完成した特別見学通路は、行幸坂の東側の入り口から天守閣前広場前を折り返し戻ってくる見学ルートで、全長約350m。20人乗りのエレベーター2基と授乳室、トイレを完備し、多くの市民、観光客が訪れやすいように配慮されています。
2020年4月29日に公開予定だった特別見学通路から熊本城の見どころを紹介する「空中回廊から 熊本城のいま」
今回は、築城400年を記念して再建された「本丸御殿」をご紹介します。
本丸御殿
加藤清正公によって1610年(慶長15年)頃に建設された本丸御殿は、儀礼や藩主の政務を行う場所として完成しました。
1877年(明治10年)の西南戦争の際に天守閣とともに焼失。
現在の建物は、熊本城築城400年を記念して、2008年(平成20年)4月に半世紀近くの時を経て復元されたものです。
この復元にあたっては、絵図、古写真や古文書などの文献資料、発掘調査で出てきたものをもとに、築城当時の技術を研究。道具、材料、工法にいたるまで、昔ながらの伝統的工法を継承する大工や左官などの職人の手によって、史実に基づく忠実な復元が実現しました。
地下1階、地上3階建ての本丸御殿の入り口は、日本で唯一地下通路にある珍しい構造で、通路が地下にあり暗いことから「闇り通路(くらがりつうろ)」と呼ばれています。石垣でできたこの地下通路には地震による大きな被害はありませんでしたが、見学者の安全のため、現在は石垣がネットで補強されています。
本丸御殿、最大の見どころといえば、贅の限りを尽くした「昭君之間(しょうくんのま)」。
豊臣秀吉の重臣であった清正公が、豊臣秀頼を迎え入れるために造ったと言われています。漢の時代の宮廷の宮女、「王昭君」の悲哀の物語を描いた豪奢な障壁画に囲まれた空間は、金箔に鮮やかな色彩が重ねられ、圧倒的な迫力と美しさを誇ります。
現存する資料から、その画風は狩野派であることが判明。狩野派の技術を熟知した京都の絵師たちにより復元された豪華絢爛な造りと装飾に、訪れた市民や観光客は魅了されました。
緻密な研究と多くの職人たちの情熱によってかつての姿を取り戻した本丸御殿でしたが、地震により「昭君之間」の床は沈下、各広間の壁が剥がれ落ちるなどの被害があり、現在は内部を見学することは出来ません。
熊本市が策定した「熊本城復旧基本計画」では、本丸御殿大広間の復旧は、2028〜2032年度(進捗状況等により時期は変動)に予定されています。
1日も早い復興を願う一方で、熊本城の復旧には、地道な調査と研究、伝統的技術工法による文化的価値の保全と円滑な復旧工事が不可欠で、多くの時間を必要とします。
天守閣外観がかつての勇壮な姿を見せ、復旧が進んでいることを実感するとともに、被災当時のままの石垣などから、これから復興に向かう姿をリアルに体感出来るのは、復旧工事中の今だけの特典と言えます。
特別公開の状況などについて詳しくは、熊本城公式サイトをご覧ください。
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