肥後古流 白水会
肥後古流宗家 小堀家13代目 小堀俊夫
1958年生まれ。肥後古流白水会会長。大学卒業後、肥後銀行で国際業務などに従事する。2014年からは肥後とみどりの愛護基金に勤務し「肥後の里山ギャラリー」館長を務め、熊本の地域文化に深く関わる。
千利休茶の湯を原型伝承している肥後古流。
小堀家初代は細川忠興の家臣・小堀長左衛門で、その次男長斎が細川家茶頭の古市宗庵から利休茶の湯の奥義を伝授されたことから肥後古流小堀家が誕生。熊本で400年間に渡り、その伝承を担っている。
高良 芸術や文化は時代によって変わるものだと思うのですが、熊本に千利休茶の湯がオリジナルでずっと変わらず残っていることを初めて知って驚きました。
小堀 変革するのが善とされることも多いのですが、こと茶の作法では、利休の手前作法を原型のまま伝承しているのは貴重だと思います。
高良 若い人や県内外の人にこの魅力を伝えたいと思いますが、どうしたら興味を持ってもらえるとお考えですか。
小堀 千利休に「茶の湯とはただ湯を沸かし茶を点てて のむばかりなる事と知るべし」という和歌があります。日常茶飯事という言葉もあるように、そんなに堅苦しいものではありませんので、興味があれば教室やイベントでお菓子を食べてお茶を飲む体験をしてもらえるといいと思います。
高良 先生がお茶から学んだことは何ですか。
小堀 お茶は和の文化の総合芸術といえる部分があり、道具も焼き物、鉄、塗り物、竹、書に花、そして茶室という建築と庭がある。好奇心を満たそうと思えば、素材はたくさんあるんです。茶室でお茶をいただくと精神的に落ち着くというのもあります。戦国武将や明治時代の財閥の功成り名遂げた人は、結構お茶をたしなんでいますよ。
高良 心がざわざわすることや人の目や言葉が気になることも多いのですが、茶室に入るとそれがなくなるのでしょうか。
小堀 物理的には4畳半のお部屋ですが、中に入った時の空気で外と違うものを感じられたんじゃないかと思うんです。やることはお茶を飲むという普段通りのことなんだけど、ここで飲むから非日常で、雑念から距離を置くことができます。人心地が付くということじゃないですかね。
高良 雑念だらけなので、そういうことか!と理解できました。茶室は満たされた孤独になれる空間。とてもおもしろい文化が熊本にあると伝えられたらいいなと思いました。
肥後古流では、武将さながら握った拳を畳につけて座礼をする。また、多くの流派では袱紗を左腰に着けるが、武士にとって左は刀をおさめる場所であるため右に着けるなど、武家茶道にふさわしい作法が残る。掛物は小堀家で大切に受け継がれている細川忠興の書状。