悠久

肥後象がん 稲田憲太郎

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肥後象がん士 稲田憲太郎

1976年生まれ。米野美術店で修業後、河口知明氏に師事。2004年に独立し、現在は香炉やアクセサリーなど幅広いアイテムをオーダーメードで制作。肥後象がん教室や小中学校での出前講座も開催し、伝統文化を伝える活動も行う。

加藤清正や細川家に仕えた鉄砲鍛冶が銃や刀の鐔(つば)に細工を施したことが始まりとされる肥後象がん(ぞうがん)。
金属や木材などに金や銀を打ち込んで模様や文字を施す伝統技法で、派手さのない上品な美しさが特長だ。



高良 鉄板に打ち込む金の線が髪の毛ほどの柔らかさで、なかなか滑らかなカーブを表現できないですね。難しかったけれど、ずっと興味があった熊本の伝統工芸を体験させてもらえたのは光栄です。

稲田 最近は地元の小中学校でも体験教室をしています。今の時代、簡単に人とつながることができる一方で、子どもたちが自ら体験したり、体感したりすることが少なくなっているように思います。体験してみると江戸時代の職人がいかに気を配って細かな仕事をしていたかがわかるし、実際に伝統文化に触れることでその魅力が伝わると考えています。

高良 いかにも現代っぽい、ハイテクなものに装飾することもあるのですか。

稲田 ハイテクなアイテムはないけど、オーダーメードで制作をしているのでいろいろな依頼があります。イタリアの弓職人からの依頼でバイオリンの弓金具に象がんを施したこともありますし、最近は尺八もありました。古典的なものをよりかっこよくする仕事の方が多いかな。

高良 自分だったら何にしてもらいたいだろう。料理人の方から包丁に、という依頼もありますか。

稲田 柄の部分にパーツをはめるとか、包丁の焼きが入っていないところに模様を入れるというのはたまにあります。あとは、肥後鐔といって熊本を中心に作られている刀の装具があって、居合道をされる方などに肥後鐔を依頼されることがあります。他にはキリストのメダイと呼ばれるお守りのようなものを肥後象がんの技法で作ったこともあります。

高良 象がんや鐔は和のイメージだけど、西洋のものと組み合わせるのもかっこいいですね。一見、象がんや鐔とはわからないけど、すごく主張を感じます。

稲田 職人歴は20年以上ですが、県内の象がん士の中では私が一番の若手。上の方たちはもう80代なので、僕が元気なうちに作り手と使い手をつないでいきたいと思っています。

稲田さんが用意してくれていたのは、高良さんの主演映画「多十郎殉愛記」にちなんだ「夏みかん」の花を装飾した肥後鐔。江戸時代に「刀は備前、鐔は肥後」といわれ隆盛を極めた伝統工芸が、約400年の時を超え2人の共作で甦る。繊細な模様を表現するため、使う道具もほとんどが稲田さんの手作りだそう。

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