日本唯一(!?)のヌードルライター大注目!
ラーメンの街・熊本の新ムーブメント


我々調査隊は、熊本で様々なマニアを探して歩く中で、福岡に『麺マニア』がいるという情報を小耳にはさんだ。なんでも彼は、最近の熊本ラーメン事情に並々ならない興味を抱いているという…。全国的にも知名度が高い熊本ラーメンだが、県外の有識者から地元の我々も知らないような情報を聞けるかもしれない。そこで、
あえて熊本県外のマニアの方に熊本のラーメンの話を聞くべく、出張を行った!そうして、待ち合わせの「福岡ラーメンショー」会場に現れた山田さん。その出で立ちは、見るからに「ラーメン大好き山田さん」。ラーメンマニアな『業界』のオーラを全身から醸し出していた。早速、会場でお互いにお目当てのラーメンをすすり合いながら、話を聞いた!
ヌードルライター・山田さんとは…?
実家が製麵工場を営む『麺のサラブレッド』として生まれ育ち、自身も麺類が大好きだという山田さん。大学卒業後は飲食店勤務を経て、編集プロダクションでライターとして活躍。その後、34歳で独立した。そんな彼が「ヌードルライター」として活動し始めるきっかけとなったのは、2007年より個人的なライフワークとして始めた『麺のブログ』。『一日一麺』をモットーに、これまで食べた麺は3,200杯以上!そのレポートをつづったブログが話題となり、麺に関する仕事が彼の元へ舞い込むようになったそう。「自分調べですが(笑)、日本でただ一人のヌードルライターだと思います」と胸を張る山田さん。そのヌードルへの愛情はラーメンだけに留まらず、最近では『うどんのはなし 福岡』という本を発行。さらに注目度が高まる麺の探求家である。
知ってそうで知らない熊本ラーメン、そして九州ラーメンの歴史
「福岡ラーメンショー」会場で好みのラーメンをスマホで撮影し、ズルズルと食べ…。黙々とラーメンを堪能する時間を経て、ようやく話を聞き始めた我々。優しい語り口で、山田さんが九州ラーメンの発祥の話から教えてくれた。「実は、熊本ラーメンの発祥は九州の中でも早いんです。白濁したスープのとんこつラーメンは久留米が発祥とされていますが、それが博多へ広がるのとほぼ同時に、玉名を経て熊本へも伝わりました。戦争直後の時代、今や熊本でも有名店となっているいくつかのラーメン店のオーナーが、その当時、味が評判だったとんこつラーメンを食べに玉名へ行ったそうです」。こうして熊本市内へととんこつラーメンがもたらされ、現在の熊本ラーメンの原型が生まれ、独自の発展を遂げていったのだ。今やラーメンは九州人のソウルフードとも言える存在で、中でも博多、久留米、そして熊本の知名度は全国的にも高い。

すべて、久留米発祥の「とんこつラーメン」であるという共通点はあるが、長年を経て独自の進化を遂げている。「久留米ラーメンはネギやノリが乗るスタイルが多い。博多ラーメンは紅ショウガと高菜を無料でトッピングできる店が多く、『替え玉』が生まれた土地であることも有名です」。そして熊本ラーメンは…。山田さんは、熊本の外から見る立場だからこそ感じたという意外な魅力を、我々に教えてくれた!

写真/『埼陽軒』のラーメン
伝統的な熊本ラーメンは、マイルドとんこつにニンニクが特徴。クセになるうまさ

熊本ラーメンの半分は優しさでできている? 人情と心配りに満ちた味

伝統的な熊本ラーメンは、とんこつスープ(豚骨と鶏ガラを合わせる場合もあり)に揚げニンニクやマー油でパンチを効かせるのが大きな特徴だ。このニンニクがクセになってたまらないのだが、反面、「コッテリしてそう」と思ったり、ニオイなどが気になって、食べたくても控えてしまったり、という場合もあるようだが…。「そういう決めつけで避けてしまうのは、もったいない! 熊本ラーメンは、想像以上にとっても優しいのです!」と山田さんは熱弁する。「まずとんこつスープは、他エリアに比べてマイルドであっさり、とんこつ臭もやや控えめ。それが絶妙で食べやすい。加えて、ニンニクが効きすぎていることをお店の方が気にして、気を遣ってくれるお店もあります。事前にニンニクの量を尋ねてくれたり、フライドガーリックをあとのせで好きな量を入れられるようにしてくれたりと、本当に優しいんです。独特の風味はもちろんですが、優しさと人間味あふれる味、これが熊本ラーメンのおいしさの秘密だと感じています」。さらに、繁華街で夜だけオープンする「夜専」のラーメン店が多いのも熊本ラーメンの大きな特徴であり、優しさを感じると山田さん。「馬刺やからしレンコンをアテに焼酎を飲んで、シメに熊本ラーメンを食べる、これこそ熊本の夜の贅沢な楽しみ方です」。お客さんへの心遣いがおいしさとなって味にまで波及している、そんな"人情派"ラーメンこそ、熊本の真骨頂なのだ。
今、熊本ラーメンに何が起こっている!?スペクタクルなラーメン王国に!!
ところが、最近の熊本ラーメンの魅力は、伝統的なとんこつラーメンに止まらないと山田さんはさらに続ける。「熊本ラーメンを土台に、塩やしょうゆ、味噌、さらには鮮魚系(にぼしなど)やつけ麺まで、幅広いジャンルのラーメン店が増えてきていますね。しかも驚くべきことに、どの新興勢力も全国水準でクオリティが高いのです。こんなにも多彩なラーメンが共存し発展している都道府県は、全国でも珍しいと思います」。山田さんにそう言われて気づいたが、いろんな種類のラーメンをよりどりみどりで選べる熊本の環境が珍しいとは、考えもしなかった。思えば、熊本という街はもともと、流行り物をいち早く察知する感受性の豊かさと、すぐに取り入れる懐の深さをもった「わさもん」の気質がある土地。これまではファッションのジャンルなどで発揮されてきたその性格が、今「ラーメン」という分野で生かされ、一大ムーブメントを築きつつあるのかも知れない…。加えて、地元産の塩やしょうゆ・味噌、さらには豊富に採れる海鮮物や「天草大王」などの食肉まで、海山の幸が豊富で質の高い食材が集まりやすいという土地のメリットもあるだろう。「伝統の味は守られ、新しい味も受け入れる土壌があり、ラーメン愛好家にとってもラーメン職人にとってもユートピアのような街。熊本のラーメンは、本当に『自由』でスペクタクルです」。

写真/『マルイチ食堂』の天草大王塩ラーメン
地鶏の一種・天草大王を使った塩ラーメンやにぼしラーメンなどの新興勢力にも注目だ

調査まとめ
熊本に住み、日々、当たり前にいろんなラーメンを食べている我々調査隊。そんな環境が恵まれたものだったと知ることができた。熊本人にとっては誇らしい事実だ。九州一、日本一のラーメン王国として熊本が名乗りを上げる日も近いかも知れない!
山田さんのウェブサイト内『その一杯が食べたくて』も必見!

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