熊本城案内人としてスカウトされた!
驚異的なお城の知識を誇る中学生

運命的に手にした1冊の本が
彼を熊本城に惚れさせた!

中学生ながら少し大人びた話し方が印象的な山元優賢くん。彼こそ、あふれんばかりの熊本城愛と知識を持つスーパー中学生だ。一冊の本を我々に見せてくれながら、いかにして彼がお城好きな子どもになったかを教えてくれた。天草で生まれ育った山元くんが熊本市に引っ越してきたのは、小学校3年生のとき。まだ一緒に遊べる友達も少なく、一人で散歩を楽しんでいるときに偶然出会ったのが、近所に住む年配の男性だった。もともと人見知りせず、知らない人と話をするのも大好きという彼は、おじいさんと意気投合して仲良しになり、大好きな歴史の話などを楽しんだそう。しかし、残念ながらその方は、約2ヵ月後に病気で亡くなってしまう。「お葬式のあと、『夫があなたに渡して欲しいと言っていた』と、そのおじいさんの奥様が1冊の本を届けに来てくれたんです。それが、この熊本城の写真集でした」。おじいさんとの短くも楽しい交流を思い出しながらページをめくると、次々に現れる熊本城や石垣の優美な姿に一目惚れしたそう。するとその歴史が気になり、実際の姿が気になり、山元くんの行動力が爆発する。図書館に通っては熊本城の歴史や特徴を調べ、何度も熊本城を訪れてその実物を楽しんだ。そんな彼の強い味方が、山元くんの祖父。おじいちゃんおばあちゃんっ子である山元くんを祖父もとてもかわいがり、今も彼の行動を熱烈にサポートしている。おじいさんの支えの中、小学生の山元くんはスポンジのように熊本城の知識を吸収していった。


熊本城に詳しすぎて、
小学6年生でガイドにスカウト!

暇さえあれば熊本城に通っていた、小学生の山元くん。持ち前の社交性で、城内を訪れた観光客と話をすることもあったというから、驚きだ! そんな彼が目立たないはずはなく、あるとき熊本城のボランティアガイドに自分の知識を披露したところ、「すごい小学生がいる!」と、熊本城ガイドにスカウトされ、初めての「子どもガイド」としてデビューすることに。足軽風の衣装を身にまとい、大人顔負けの知識量で観光客の案内をする山元くんの姿は、当時メディアでも多く取り上げられた。「知らない人と話をするのが好きなので、ガイドはとても楽しかったです。お城に詳しい大人の方と知識の交換を行うこともあって、自分にとっても大きな勉強になりました」と山元くん。月1~2回、週末のガイド活動を通して、誰もが知る知識だけではなく隠れた魅力も伝えたいと、勉強にも一層身が入った。「熊本城は日本に残る城跡のなかでも、とにかく復元の規模が桁違い。だからこそ、どれだけ勉強しても興味が尽きないし、紹介できる魅力もとても多いんです」と熱く目を輝かせた。


街の成り立ちや戦の作戦まで
わかるのが面白い!

中学3年生となった現在、ガイドの活動は行っていないが、お城への情熱は変わらず持ち続けている。写真集やお城の資料を見せてくれながら、「宇土櫓の高さはウルトラマンよりも1m低い39m」「第一高校には、昔の水堀があった古城の跡が残っている」「鬼門にあたる北東の『あかずの門』は迫力もすごい」「二様の石垣は築造年代によって反り方が違う」と次々に知識や見所を教えてくれ、多少は勉強しているつもりだった大人の我々も、圧倒されるばかりだ。なぜ、そこまで熊本城に引き込まれるのか?「熊本城の魅力を知るには、まず等高線が分かる地図を見て欲しい。敵をはねのける『武者返し』の石垣や、籠城に備えてたくさんの井戸を掘った話は有名ですが、地形的全体をみると、その防衛の仕組みがよく分かるのです。お城は茶臼山という50mの山に造られているのですが、天守閣がある東側は天然掘の坪井川があり防衛しやすいが、平地に畑が広がっていた西側からの攻めには弱かった。そんな土地の特徴をつかめば、石垣や櫓の意味、周辺の街の成り立ちまで、すべてが一つの線としてつながって、よりお城への興味も増していくんです」と山元くん。土地を知り、歴史をひもとくことで、お城にある石垣や建物の意味一つ一つを知る、大人でも難しい高度な楽しみ方を心得ている山元くん。熊本城が持つ価値をよく理解しているからこそ、貪欲に知識を吸収できるのだろう。彼の歴史やお城への興味は、全国へと向かっている。これから高校生となり、大人になっていく彼がどのように歴史を楽しんでいくのか、とても楽しみだ。


熱人フォトアルバム

A.この写真集との
出会いがきっかけ!
地元の新聞社が出版した、熊本城の写真集。この写真に小学生だった山元くんは心奪われた。
B.熊本城
ガイドデビュー!
小学6年生の時に、熊本城ガイドとしてデビュー!当時は新聞やテレビでも取材された。
C.お城や歴史に関する
資料いっぱい
熊本城はもちろん、全国のお城や歴史に関する本もいっぱい。祖父と一緒に楽しんでいる。
D.熊本城を知るのに
最適な「湧々座」
映像や音声などわかりやすい案内が豊富で、熊本城の予習をするのにオススメのスポット。

山元さんの回答Q&A

熊本城で好きな場所は?

正直言うと「全部が好き」なのですが、あえて言えば…、やはり「宇土櫓」や、高さ9m・長さ131mの石垣が圧巻の「百間石垣」は外せません。最近は「旧細川刑部邸」もお気に入りです。静かで品のある武家屋敷の雰囲気に気持ちが落ち着き、居心地がいいです。  
 

天守閣などは西南戦争で焼失し復元されたものだが、「宇土櫓」は戦火を逃れ、当時の姿をそのまま残している。戦国~江戸時代を肌で感じられる空間だ。

全国のお城で興味があるのは?

幕末が好きなので、明治維新前後に様々なドラマが生まれた京都の「二条城」はとても興味があります。家族旅行で京都に行ったときにも訪れました。あとは、天草の苓北町にある「富岡城」も大好きなお城です。海が見える景色がとても気持ちいい場所です。

「名城コレクション」など、歴史やお城の書籍を集めては楽しんでいる。祖父も歴史が好きなので、本を読んでは歴史談義に華を咲かせるのが、楽しいひととき。


山元 優賢

錦ヶ丘中3年(取材時)。小学生の頃から剣道少年で、好きなテレビ番組は「笑点」。最近は伝統的な「能楽」にも興味を持ち、能楽の体験にも参加したそう。

調査まとめ

話し方から熊本城に関する知識量まで、大人びた印象が強い山元くん。祖父母の家にほぼ毎日遊びに行くなど、年長者と話す機会が多いことも、今の彼の魅力を作り出しているのだろう。一方で好きな音楽を尋ねると、最近は洋楽のQUEENがマイブームだそう。やはり渋い選択だが、チラリと年相応の表情も見せてくれた。


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