映画の街として熊本を盛り上げるべく
映画を観て、撮り、発信する映画マニア!

幼少期から両親と
映画館に通うサラブレッド!

熊本大学黒髪北キャンパスに到着した我々調査隊。敷地の北東部にたたずむ文化部棟で出迎えてくれたのが、今回の調査対象者である稗田琢朗さんだ。訪れた部室は「映画研究部」。そう、彼は映研部の部長を努める、映画大好き大学生なのだ。早速部室へ入ると、ど真ん中にコタツがある妙に居心地のいい空間。映画情報誌やポスターに加え、映像の撮影機材や照明機材、小道具なども並んでいる。「映画研究部」とは、「映画を観る」のはもちろん、自分たちで脚本づくりから、撮影や編集、音声、照明、そして俳優まで行う「映画を撮る」活動も行うサークルだ。「映像を作ったり役を演じたりするのは大学生になって初めて経験しました。最初は照れもあったけど、制作を経験することで映画を見る目も少し変わったように思います」。とはいえ、やはり「観る」方が何よりも大好きだという。両親共に映画好きだったことから、物心ついたときから映画が生活の一部だったという稗田さん。月に1回以上は映画館通い。大きなシネコンはもちろん、熊本市新市街にある映画館・Denkikanにもよく来ていたそうだ。「特に母が、Denkikanのマイナーだけどツウな名作の上映が大好きで、僕もその影響をとても受けました。熊本にあのような映画館があるのは、映画ファンにとって大きな財産だと思います」。これまで観たジャンルは洋画・邦画問わず幅広く、テレビで放映されるロードショーやDVDレンタルで見た作品まで合わせると膨大な本数に。映画館に恵まれた環境で、家族ぐるみで映画マニアとなるべく英才教育を受けていた!


「映画研究部」の活動で
映画の知識がさらに幅広く

勉強のため映画を観ることを控えていた高校時代を経て、熊本大学に進学した稗田さんが迷い無く選んだサークルが映画研究部。昨年、創部50周年を迎えた長い歴史を持つ。サークルでは定期的に上映会を開催。事前に部会で観る映画を決め、教室を借りて大型プロジェクターで観るのだが、洋画・邦画・SF・恋愛もの・メジャータイトルからB級まで、とにかく幅広い。「今まで『食わず嫌い』だったジャンルや作品も、仲間達と観て語り合うことで新たに魅力を発見したりと、よりフラットな目でさまざまな作品を観ることができるようになりましたね」と稗田さん。1年間で40本以上は観るという。そんな彼だが、テレビドラマよりも「映画」に引き込まれるのはなぜか? 「映画ならではのフィルムの質感が感じられる映像が魅力的。そして、映画は限られた時間で必ずドラマが完結する。約2時間の尺に凝縮された物語や感動の密度の濃さが、とても好きなんです」。


映画の舞台・ロケ地としての
熊本の魅力をもっと発掘したい!

このようにサークル活動を通して映画の見識を深める中で、映画の舞台としての熊本の存在感にも気づいたという稗田さん。「三角西港や山鹿市の八千代座が時代劇のロケ地に使われたり、阿蘇の大自然が使われたりすることも多いですが、熊本市街地の日常の風景も映画の素材としてとても魅力的だと感じます」。工学部建築学科の学生である稗田さんは、特に熊本の建物と風景との調和に注目しているそうだ。「古くから残っている味わい深い建物が、熊本にはまだまだある。それらを保存・活用できれば、映画の撮影にも効果的に生かせるんじゃないかとつい考えてしまいます」。折しも最近、オール熊本で撮られた行定勲監督の「うつくしいひと」(2016)や、熊本が舞台になった日本・タイ合作映画「アリエル王子と監視人」(2015)など、熊本がフューチャーされた作品が話題になったばかり。高良健吾さん、橋本愛さんなど熊本出身俳優の活躍も光っている。日常の景色としてさり気なく映る熊本城や街並み、そして山や水の美しさは、映画のロケーションとして何にも代え難い財産だと感じているのだそう。「私達も自主制作映画を撮影する上で、ロケーションや物語を身近な所から発掘して、『映画の舞台』としての熊本の魅力をもっと掘り起こしたい。そしてその情報を発信することで、もっと熊本が映画の街になっていけばと思います」。


熱人フォトアルバム

A.部屋内には
「キネマ旬報」
新作はもちろん、マイナーな映画や過去の名作まで幅広く視聴し、勉強しています。
B.撮影機材も
たくさん!
映像制作の際には、脚本・撮影・俳優と様々な役割を担当して一つの作品を創り上げます。
C.いろんな映画の
活動に参加!
「菊池映画祭」のボランティアをはじめ、県内の映画関係の活動にも積極的に参加!
D.映画大好きな仲間達!
映画研究部での夏合宿の様子。今年は部員が多く入り、頼もしい後輩も増えました!

福島さんの回答Q&A

稗田さんが好きな映画は?

洋画だと「フォレスト・ガンプ/一期一会」ですね。何度も観ていますが、観る度に前向きに生きる活力をもらえる映画です。邦画だと、瑛太、上野樹里が出演した「サマータイムマシン・ブルース」です。一見軽いストーリーに張り巡らされた伏線が見事な作品です。

「フォレスト・ガンプ/一期一会」を初めて観たのは小学生の時だったそう。サークルでは、彼らが生まれるはるか前に作られた名作映画を観て学ぶ機会も多いそう。  
 

熊本市内でオススメのロケ地は?

熊本城などが素晴らしいのは言うに及ばずですが、個人的には街中の路地裏に言いロケーションがたくさんあると思います。古い建物と新しい景色が同居した、普通だけど味がある雰囲気で、ストーリーの創作意欲をかき立てる場所も多いです。

映画研究部では定期的に短編の自主制作映画を撮影している。ロケーションは大学敷地内や周辺が多い。立田山の自然や大学の味わいある建物など、撮影場所には事欠かないそう。


稗田 琢朗

熊本大学工学部建築学科2年(取材時)。鹿本町(現山鹿市)出身。映画研究部部長。幼少期より両親の影響で映画を観ながら育った、生粋の映画マニア。

調査まとめ

妙に落ち着く部室のコタツに入りながら取材を行った調査隊。映画を観るだけでなく「撮る」視点、そして建築を学ぶ視点を交えた映画の話は、大変興味深いものだった。映画作品における熊本の街の新たな魅力が、彼ら若い世代のフィルターでこそ掘り起こされるのかもしれない…!


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