魅力をもっと全国へ、世界へ!
夜の下通りを焼酎で盛り上げる焼酎マスター

人と人とをつなげる
焼酎の魅力にハマる

「とことん焼酎を愛する男がいる」、そんな噂を聞きつけ、我々が訪れたのは夜の熊本市下通り。様々な飲食店が建ち並ぶ「栄通り」にある1軒のバーに入ると、爽やかな笑顔の好青年が「いらっしゃい!」と迎えてくれた。彼が噂の福島圭志さん、熊本でも珍しい焼酎専門のバー「粋.(いき)」を営むオーナーだ。店内には、芋焼酎を中心に壁一面ずらりと焼酎瓶。熊本県産はもちろん、芋焼酎のメッカである鹿児島・宮崎産までさまざまだが、なじみのあるラベルはほとんど見られない。「うちには、市販店には無いような珍しい焼酎が多いんですよ」。我々は早速、マスターが数日前から用意してくれていた芋焼酎の「前割り」(焼酎と水を数日壺で寝かせ、直前で温める飲み方)のまろやかな風味を楽しみながら、ほろ酔い調査を始めた。福島さんがこの焼酎バーをオープンしたのは24歳の時。理由は「焼酎が好きだったから」と至極明快なもの。「熊本って、飲みの席で焼酎の『わかっている』と一人前に扱われる雰囲気があるでしょ。私も前職で焼酎を通して上司達と心を通わせていた経験があり、自分の中で『特別なお酒』になっていたんです。まあ、若い頃は味わうというよりも『酔う』のが優先でしたが(笑)」。熊本の夜の社交場、いわゆる飲ミュニケーションの武器として覚えた焼酎は、お店の武器にもなる! そう考えた福島さんは、大好きな焼酎をコンセプトにしたバーを計画し、オープンした。折しも時代は、関東を中心に芋焼酎ブームが広まっていた時期。そんなブームも追い風になって、福島さんはお店のオープンと共に焼酎にのめり込んで行くことになった。


産地に行き、蔵で話し
焼酎の深さを掘り起こす

しかし、そこで「お店に焼酎をたくさん揃える」だけでは満足できなかったところが、福島さんがアツい焼酎男と呼ばれる所以だ。「自分が美味しいと思うものを、しっかり選んで提供したい」とこだわった福島さんは、週1回のペースで焼酎の蔵元へと足を運び、直接買い付けに出かけた。熊本県内はもちろん、鹿児島、宮崎へも足繁く通い、生産者とたくさんの話をした。市販にない焼酎の品揃えが多いのも、このように直接現地で厳選し、買い付けているからだ。「焼酎の味わいや生産者のこだわりは、実際に足を運ぶからこそ分かることも多いです。また、その土地ならではの楽しみ方や美味しい飲み方など、地域地域の『焼酎文化』がわかるのもとても楽しいですね」と福島さん。だからこそ、焼酎の品揃えはとても多いとまでは行かないが、その分一つ一つへの思い入れは深い。我々のグラスも、そろそろ2杯目。福島さんが語るリアルな焼酎の話を聞きながら飲むと、より味わいが増して美味しく感じられるから不思議だ。「今はいろんな情報を簡単に仕入れられる時代ですが、私は焼酎のプロとして、それ以上の知識や魅力を伝えられる存在であるべきだと思っています」と福島さん。「歩く焼酎辞書」的な知識と、足で稼いだ「生きた焼酎の情報」こそ、彼の一番の持ち味なのだ。とはいえ、お店では「焼酎を勉強していかないと…」などとかしこまる必要は全くない。むしろ、これから焼酎を覚えたい初心者こそ楽しめるお店だ。お客様の好みをさり気なく察して、絶妙なタイミングで勧めてくれる福島さんの素晴らしい接客に酔いながら、3杯目をオーダーした。


焼酎王国・熊本の可能性は
計り知れない!

「粋.」は2016年でオープン12年。地元の常連客はもちろん、関東・関西などからの旅行客や出張のお客さんにも愛され続けている。その理由は、この1店舗で九州のいろんな焼酎を味わい、かつ知識も得られる点にあるようだ。「『焼酎のプロ』にとって、熊本市はとても恵まれて立地だと感じます」と福島さん。熊本自体が焼酎文化を持つ土地であることはもちろん、県内外の焼酎の有名産地へ簡単に足を運べ、品物も集まりやすい。焼酎のアンテナショップ的存在として「ちょうどいい」位置にあるのだ。そんな中、福島さんは2015年に2店舗目となる「BAR鯔背(いなせ)」をオープンした。九州各地の芋焼酎を扱う「粋.」と違い、こちらは球磨焼酎を中心とした熊本地焼酎専門のお店。さらに、100%フレッシュジュースやカクテルも揃え、女性も気軽に立ち寄れる雰囲気だ。「熊本には、世界に認められる球磨焼酎をはじめ、素晴らしい焼酎の蔵元がたくさんあります。でも、『多くは語らず、背中と味で語る』という熊本人らしい朴訥とした気質もあって、なかなか魅力を発信できていない現状があると思います。蔵元を回っていると、『こんなにいい焼酎があるのに』と、とても実感するのです。だからこそ私がその情報発信基地となって、もっともっと熊本の焼酎の魅力を発信していきたいですね。狙いは世界です!」と意気揚々と語る福島さん。我々も4杯目を傾けながら、赤い顔でうなずく。楽しい酒だ。Sakeとして世界中に広まる日本酒の後塵を拝している感もある焼酎。しかし、焼酎産地の中心にある熊本市の夜の街から、1人の男の情熱によって世界に爆発的なムーブメントが起こるかもしれない…!


熱人フォトアルバム

A.ズラリと揃う焼酎が
圧巻の店内
多くの焼酎ファンで賑わう「粋.」の店内。モニターに表示される焼酎の小ネタも楽しい。
B.2店舗目は
オシャレバー!
焼酎のイメージを覆すようなバー空間が広がる「鯔背」。「粋.」と同じビルの2階に。
C.密かな名焼酎が、
たくさんあります
一般に知れ渡っていない魅力的な焼酎を掘り出し、紹介するのが一番の喜び。
D.生産地へよく
足を運んでいます
その焼酎を知るには、蔵元のかたとお話しするのが一番!美味しい出会いが待っています。

福島さんの回答Q&A

おすすめの飲み方は?

お客様の好みに合った飲み方がベストですが、当店で新しい飲み方にもチャレンジして欲しいですね。前もって焼酎と水を壺に寝かせて風味をまろやかにする「前割り」は芋焼酎にオススメ。米焼酎は産地の球磨地方でよく飲まれている「燗ロック」もあります。

「燗ロック」は、直火で焼酎を温めて、ロックグラスに注ぐ飲み方。米焼酎のまろやかさとロックの清涼感両方が引き立つ飲み方です。絶妙な温め具合がポイント。  
 

最近の焼酎のブームは?

女性を意識したオシャレなデザインの焼酎が増えてきているように思いますね。昔ながらのごつい和風のラベルも趣があって良いですが、洗練デザインのボトルから注ぐとまた違った風味に感じられます。焼酎を使ったカクテルも最近増えてきています。

焼酎とは思えない可愛い・オシャレなデザインのボトルも豊富。「粋.」でも品揃えが多い「梅酒」に加え、「ブルーベリー酒」「シークワーサー酒」など飲みやすい焼酎も豊富に。


福島 圭志

焼酎Bar粋.(いき)熊本市中央区下通1-9-27-B1F TEL 096-355-2330、およびBAR鯔背(いなせ)熊本市中央区下通1-9-27-2F TEL 096-355-2226オーナー。

調査まとめ

調査を終える頃にはすっかりへべれけの我々。厳選焼酎の旨さはもちろん、福島さんの膨大な焼酎の知識を、それを絶妙に楽しく教えてくれる雰囲気に楽しく酔った一晩だった。教えてもらった焼酎の知識を早速誰かに披露したい気持ちに。さあ、今日は誰と飲もうか。


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