藤崎台のバックネット裏で見つけた!
約25年観戦し続ける、“熊本の”高校野球ファン。

球場に惚れこんだことが
高校野球にハマった最初のきっかけ

待ち合わせ場所の藤崎台県営野球場に現れた50代の男性。頭には、高校球児が練習中にかぶるものと同じ白いキャップ。しかもかなり年季が入っている。「高校球児たちのように爽やかな気持ちで仕事に臨めるよう、このキャップを愛用しているんですよ」と語る彼こそ、熊本の高校野球を25年以上見守り続けている生き字引的存在・村田俊朗さんだ。村田さんの母校は、ことし(2016年)春のセンバツ出場を果たした秀岳館高校。とはいえ、彼自身は野球をしていた訳ではない。「初めて野球場で試合を見たのは、高校時代の天草工業高校との試合。八代市民球場まで全校応援に行ったときです。」しかし野球を観戦したのはそれきり。卒業後、東京で12年過ごした間は、野球とはまったく無縁の生活を送っていたそうだ。そんな彼がなぜ、熊本の高校野球にはまることになったのか?その大きなきっかけは、藤崎台県営野球場にあるのだそうだ。「東京から帰ってきて、改めて熊本の良さを実感していたところに立ち寄ったのがこの球場でした。熊本城のすぐ横で、大きなクスノキを背負うようにして広がるこの球場はなんと美しいのだろうと。そうして足を運ぶうちに、そこでプレーしている高校野球にも引き込まれたんです。」球場に惚れるのが先だったとは、何とも意外な理由だ。


真の高校野球観戦マスターは
試合よりも練習やベンチを観る!

そうして高校野球を観戦し始めて、約25年。仕事もしているので毎試合必ずとはいかないが、夏の県予選はもちろん、春の九州大会・秋の九州大会、さらに1年生大会やNHK旗、RKK旗と、休みが合う限り試合には足を運んでいる。しかし、意外にもプロ野球観戦にはそこまで熱中していないのだそう。「高校野球」にハマった理由とは?「高校球児がひたむきに打ち込む姿を見たい、そのために足を運んでいます」と目を輝かせる村田さん。「365日、2年半ひたすらトレーニングを積んで1試合にかける情熱。そして1つのプレー、1つのエラーで起こるドラマ。一礼してグラウンドに入り、勝っても負けても最後にはグラウンドに頭を下げてこれまでの感謝を示し去る姿。球場内のゴミ掃除に勤しむ一年生。そのような爽やかで清々しい様子に、毎回感動をもらえる」。さらに、ナインが均等にバッターボックスに立ち、誰もがヒーローになる可能性がある「野球」だからこそ生まれるドラマにも、すっかりハマっているのだという。「でもね、テレビ観戦だけでは満足できないんですよ」と続ける村田さん。観戦に行くとき、彼は試合の2時間前から球場に入り、球児達の練習の様子からじっくり観るのだそう。試合中も、試合自体はもちろんベンチにいる選手や監督のサインなど、その一挙一動を見るのが楽しいのだとか。「家族からは『テレビ中継があるのにわざわざ観に行かなくても』と言われることもあります(笑)。でも、試合の迫力や、選手・監督の細かな表情まで観られるのは、生の観戦ならでは。地元の身近な高校生が起こす、リアルなドラマと感動を肌で体感できるのが醍醐味なんです。彼らの姿に、本当に元気をもらっています」。これこそ、高校野球通ならではの観戦術だ。


球児が頑張る姿に力をもらうため
時には練習を見に行くことも!

「試合のプログラムや入場チケットは必ず取ってあるんです」と見せてくれたのは、どっしりと重いファイル。チケットにはどのような試合だったかのメモも添えてある。新聞の号外や切り抜き、会場で配られるうちわもあり、さながら熊本高校野球資料館だ。ページをめくる度に「この年は、多良木高校の善投手が活躍したなあ」「この年から文徳は3年連続決勝で逆転負けだもんね。次こそは勝って欲しいね」「済々黌の大竹投手はすごかった」「二つの高校が合併して、一つの野球部として打ち込む姿にも感動したねえ」と思い出が次々と蘇ってくる。村田さんのように、藤崎台に通う高校野球観戦の“常連さん”が何人もいて、皆バックネット裏のお気に入りの席で観戦しているそう。試合の前後に皆で交流し、注目の選手や監督について情報交換するのも楽しみの一つ。さらに、注目の高校の練習を学校まで見に行くこともあるそう。「部員が多い高校の練習を観に行ったときのことですが、そこのレギュラーメンバーは練習試合で校外に出ていたんです。残っているレギュラーが必死にダッシュしたりと練習に励んでいるのを見て、そのひたむきな姿にとても感動しました。『レギュラーになりたい』という強い想いが練習に表れていて、思わず『頑張って』と声をかけたら、すごく大きな声で『ありがとうございます!』と返してくれて。あの真っすぐさはたまりませんね」と笑顔の村田さん。その時の選手が試合に出ていると、また思い入れもひとしおだという。球児を見守る親心のようでもあり、同じように若くなった気持ちで観ることもあるという高校野球。これから試合観戦をするときは、バックネット裏で見守る村田さん達の温かな目線にも注目したい。


熱人フォトアルバム

A.村田さんの
宝物ファイル!
これまで足を運んだ大会プログラムと入場券はすべてファイリング。新聞切り抜きもあって思い出もいっぱい!
B.野球観戦の
必須道具
キャップにクッション、夏は麦わら帽子とうちわも必須。熱中症には気をつけます。
C.ここが村田さんの
指定席
バックネット裏のやや高いこの席がお気に入り。常連さんは皆、「いつもの席」があるそう。
D.大好きな
球場の景色
大きなクスノキと熊本城、金峰山を望むこの球場の景色が大好き。「熊本が誇る財産」と語ります。

村田さんの回答Q&A

これまで最も印象深かった試合は?

最近ですと2012年夏の熊本県予選決勝の「済々黌×必由館」ですね。済々黌の黄色な大応援団、その済々黌卒業生である必由館の監督、近年まれに見る好投手だった済々黌の大竹投手、途中まで必由館がリードしていながらの逆転劇と、はじめから終わりまでドラマづくしの印象的な試合でした。

写真は済々黌が甲子園出場を決めた際の号外。印象的だった試合は、当時の新聞の切り抜きや号外もファイルに保存している村田さん。ページをめくる度に当時の思い出が蘇る。
 
 

今、注目している高校は?

昔だったら「熊本工業」一択でしたが、正直言って最近は群雄割拠で、いい選手もあちこちに分散している。3年連続で地区予選決勝で敗退している文徳や、安定して強い城北、九州学院、済々黌、そして母校の秀岳館など、他にもいっぱい。どの学校にでも甲子園のチャンスがある、すごい時代だと思いますよ。

ニュースに名前が出るような選手はもちろん、スタンドで応援している選手まで、すべての選手を愛おしく思うという村田さん。プログラム内に名前が並ぶ選手一人一人にもドラマがある。


村田 俊朗

福祉施設職員。高校野球観戦歴約25年。高校2年の息子さんがいるが、野球部には入っていないそう。奥様も村田さんの趣味を「好きねぇ」と温かく見守っている。

調査まとめ

16~18歳のドラマに魅せられ、観戦に通う村田さん。夏の大会では開会式から参加し、ヘリコプターからボールを投下する始球式に胸を熱くするそう。「どの学校にもチャンスがあるのが、野球という競技。1点1点を大事にする練習を重ねて、本番で力が発揮できるよう頑張って欲しい」と球児へのエールをもらった。


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